薬機法(旧薬事法)
【2023年最新】薬機法(旧薬事法)を徹底解説!規制の対象となる製品や違反した際のリスクなど
医薬品等の製造や販売と深い関わりのある「薬機法(旧薬事法)」。この薬機法に違反した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用される可能性があります。本記事では、薬機法の概要をはじめ、薬機法の対象物やその内容、違反した際のリスクや罰則、注意すべきポイントなど、薬機法を遵守するためにも、わかりやすく解説させていただきます。

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医薬品等の製造や販売と深い関わりのある「薬機法(旧薬事法)」。
正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と呼び、医薬品や化粧品等の製造や販売などについて定めています。
薬機法に違反した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用される可能性があることをご存知でしょうか。
この法律には、対象となる製品の製造者や販売者だけに限定されているだけでなく、広告規制も定められており、代理店・制作会社・ライター・インフルエンサーなども対象者の1人となります。
従って、薬機法を正しく理解し、法に抵触しないように努めることが重要です。
「知らず知らずのうちに薬機法に違反していた」などのトラブルを防ぐためにも、弁護士をはじめとする専門家にアドバイスを仰ぐ、というのも一つの選択肢ではないでしょうか。
本記事では、薬機法(旧薬事法)の概要をはじめ、薬機法の対象物やその内容、違反した際のリスクや罰則、注意すべきポイントなど、皆さまの疑問を解決するため、わかりやすく解説させていただきます。
薬機法(旧薬事法)とは

以前は「薬事法(やくじほう)」と呼ばれていましたが、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、現在の名称に変更されました。
改正により、「医療機器」や「再生医療等製品」の規制など、新たな制度が導入された次第です。
さらに、2021年8月1日にも法改正が成され、次の項目が追加されました。
- 課徴金制度が導入
- 措置命令
これに違反した場合には、行政指導による措置命令が下される他、懲役刑や課徴金の支払い義務が生じます。
薬機法の目的

薬機法の目的は、先ほどご紹介した通り、『製造・販売規制によって、医薬品等の安全性と品質を確保し、保健衛生の向上を図ること』です。
第1条:目的
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
上記を要約すると、次の通りです。
- 医薬品等の品質・有効性・安全性を保護すること
- 医薬品等の使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大を防止すること
- 特定の医薬品に関する規制を実施すること
- 医療上特に必要性が高い医薬品・医療機器・再生医療等製品の研究開発の促進すること
つまり、消費者の健康を保つため、人の身体に直接作用する医薬品等をはじめとした製品の品質や有効性、安全性の確保と規制に加え、指定薬物に関する措置を講じ、健康被害の発生・拡大の予防についての規制を行っています。
また、薬機法の対象となるのは、医薬品をはじめ、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品です。
ちなみに、消費者が安心して医薬品等を使用するため、ドラッグストアに並んでいる商品に関しても、この法律に従い、医薬品や医薬部外品、化粧品などに分類されています。
薬事法の対象となる範囲

こちらの章では、薬機法(旧薬事法)の対象範囲について、ご紹介します。
薬機法の規制対象は、次の5つの分野です。
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
これらの製品を総称し「医薬品等」と呼びます。
それでは、各分野ごとに見ていきましょう。
1. 医薬品

繁用されている医薬品が収載された「日本薬局方」と呼ばれる、厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書に記載されたものを条件としています。
ただし、機械器具等の場合、医薬品ではないため、注意しましょう。
第2条第1項:医薬品の定義
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
- 日本薬局方に収められている物
- 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
- 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
また、医薬品は次の3つの項目に分類されます。
- 薬局医薬品
- 要指導医薬品
- 一般医薬品
詳細は次の図の通りです。
分類 | 内容 |
薬局医薬品 | ◼️ 原則医師の診断に基づく処方箋が必要で、医師等により使用される。 ◼️ 処方箋の有無により、次の2項目に分類される。 ・「医療医薬品(処方箋)」:人体に対する作用が著しく、重篤な副作用を生じるおそれのある医薬品 ・「薬局製造販売医薬品」:薬局の設備・器具を用いて製造し、薬局で直接販売・授与する医薬品 |
要指導医薬品 | ◼️ 薬局や薬店で処方箋なしの購入は可能であるが、薬剤師の説明を聞かなければならない。 ◼️ インターネットでの販売は禁止されている。 ◼️ 4項目に分類される。 ・「ダイレクトOTC医薬品」:医薬品のうち、医療用医薬品も含めて初めての有効成分を含有するもの ・「スイッチ直後品目」:医療用から一般用に移行して間もなく、一般用医薬品としてのリスクが確定していないもの ・「毒薬」:毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品 ・「劇薬」:劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品 「要指導医薬品」:副作用等のリスクが特に高く薬剤師の対面による情報提供や指導が必要な医薬品(例:「鼻炎の新薬」「花粉症の新薬」など) |
一般医薬品 | ◼️ 薬局や薬店で処方箋なしの購入やインターネットでの購入も可能。 ◼️ 薬剤師の情報提供や服薬指導は不要 ◼️ リスクの程度により、次の3項目に分類される。 ・「第1類医薬品」:副作用等のリスクが高い医薬品(例:「胃薬(H2ブロッカー)」「一部の毛髪剤」など) ・「第2類医薬品」:副作用等のリスクが中程度の医薬(例:「解熱鎮痛剤」「鎮痛剤」「風邪薬」など) ・「第3類医薬品」:副作用等のリスクが比較的低い医薬品(例:「湿布」「整腸剤」「消化薬」など) ※ 第1類医薬品に関しては、購入時にかならず薬剤師より薬の説明や注意事項の確認が行われる。 ※重ねて、「第2類医薬品」の中に、第2類医薬品の中で特に注意が必要な医薬品である「指定第2類医薬品」が存在する。(例:「漢方薬」) |
2. 医薬部外品

具体的には、吐き気をはじめとする不快感や口臭・体臭・あせも・ただれ等を防止するもの、脱毛の防止・育毛または除毛などの美容目的としたものです。
また、ねずみ・はえ・蚊・のみなどの生物の防除を使用目的とし、機械器具等でないものに加え、「薬用化粧品」も医薬部外品に含まれます。
「厚生労働大臣が指定するもの」とは、「指定医薬部外品」を指し、医薬品販売の規制緩和(2009年度の薬事法改正)に伴い、医薬品から医薬部外品へと移行された品目です。
ちなみに、この規制緩和により、薬局などの限られた場所だけでなく、一般小売店(スーパーマーケットなど)でも販売できるよう変更されました。
第2条第2項:医薬部外品の定義
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
- 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
- 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
- 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
また、医薬部外品は次の3つの項目に分類されます。
- 指定医薬部外品
- 防除用医薬部外品
- 医薬部外品
詳細は次の図の通りです。
分類 | 内容 |
指定医薬部外品 | ◼️ 厚生労働大臣が指定する有効成分の名称及び分量の表示が必要なもの。 ◼️ 2009年度の薬事法改正による規制緩和に伴い、医薬部外品に変更されたもので、一般小売店で購入可能。 (例「一部ビタミン剤」「整腸剤」「のど清涼剤」など) |
防除用医薬部外品 | ◼️人または動物の保護のために、上記の薬機法で定義されている害獣・虫を防除の目的のために使用される製品。 ◼️ 一般小売店で購入可能。 (例「殺虫剤」「殺鼠剤」「虫除け剤」など) |
医薬部外品 | ◼️ 2009年度の薬事法改正以前から、医薬部外品として販売されていたもので、一般小売店で購入可能。 (例「薬用化粧品」「浴用剤」「制汗剤」「制汗剤」「除毛剤」「育毛剤」など) |
3. 化粧品

ただし、「医薬品」としての使用目的を併せ持つものや「医薬部外品」を除外したものに限ります。
また、薬局やドラッグストア以外でも購入可能な製品です。
第2条第3項:化粧品の定義
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
化粧品の具体例をはじめとする、詳細は次の図の通りです。
分類 | 内容 |
指定医薬部外品 | ◼️ 人体に対する作用が緩和で、人の身体を清潔にしたり、美化し、魅力を増すことを目的とする他、容貌を変えるために使用される。 ◼️ 一般小売店で購入可能。 (例「シャンプー」「リンス」「コンディショナー」「石鹸」「化粧水や保湿クリームをはじめとするスキンケア用品」「ファンデーションや口紅などのメイクアップ用品」「マニキュア」「香水」など) |
4. 医療機器

身体の構造や機能に影響を及ぼすための機械器具等もこちらに分類されます。
第2条第4項:医療機器の定義
この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
また、医療機器は次の3つの項目に分類されます。
- 高度管理医療機器
- 管理医療機器
- 一般医療機器
上記の項目を問わず、保守点検・修理・その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とする医療機器である「特定保守管理医療機器」が存在します。
詳細は次の図の通りです。
分類 | 内容 |
一般医療機器高(クラス1) | ・不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いもの ・厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの (例「医療用ピンセット」「メス等の鋼製器具」「救急絆創膏」「体温計」「ネブライザー」など) |
管理医療機器(クラス2) | ・不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが比較的低いもの ・厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの (例「血圧計」「家庭用マッサージ機」「補聴器」「歯科用合金ろう」など) |
高度管理医療機器(クラス3・4) | ・不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いもの ・厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの (例「コンタクトレンズ」「輸液ポンプ」「ペースメーカー」など) |
特定保守管理医療機器 | ・不具合が生じた場合、疾病の診断・治療または予防に重大な影響を与えるおそれがあるもの ・厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの (例「X線撮影装置」「レントゲン装置」「MRI装置」「超音波画像診断装置」「心電図」「内視鏡」など) |
5. 再生医療等製品

身体の構造や機能の再建・修復、形成や疾病の治療・予防、遺伝子治療などを目的としています。
人の細胞等を用いるため、品質が均一ではないことに加え、有効性の予測が難しいケースもあるという点が特徴です。
第2条第9項:薬機法の定義
この法律で「再生医療等製品」とは、次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
- 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの
イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成
ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防
- 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの
また、再生医療等製品は次の3つの項目に分類されます。
- 第一種再生医療等
- 第二種再生医療等
- 第三種再生医療等
再生医療等製品の具体例をはじめとする、詳細は次の図の通りです。
分類 | 内容 |
第一種再生医療等 | ・安全性へのリスクが高いもの ・第一種再生医療を行う場合、「特定認定再生医療等委員会」に「治療の提供計画」を提出し、厚生労働大臣の承認を受ける必要がある (例「ES細胞・iPS細胞」「他人の幹細胞を利用するもの」など) |
第二種再生医療等 | ・安全性へのリスクが中程度のもの ・第二種再生医療を行う場合、「特定認定再生医療等委員会」の意見を聞き、「治療計画」を厚生労働大臣に提出する必要がある (例「患者自身の体性幹細胞などを利用するもの」など) |
第三種再生医療等 | ・安全性へのリスクが低いもの ・第三種再生医療を実施する場合、「認定再生医療等委員会」の意見を聞き、「治療計画」を厚生労働大臣に提出する必要がある (例「加工を施した体性細胞を利用したもの」など) |
薬機法違反にあたる行為の例

冒頭、薬機法に違反した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用される可能性があるとご紹介しました。
薬機法違反として見なされる行為は、次の3つの項目です。
- 無許可営業・無登録営業
- 医薬品等の取り扱いに関する違反
- 広告規制違反
それでは、各項目ごとに、解説させていただきます。
1. 無許可営業・無登録営業

許可または登録を受けずに、無断で次の各事業を行うことは、薬機法違反です。
A:許可制
対象分野 | 具体的な内容 |
【薬局】 | 薬局の開設(薬機法第4条第1項) |
【医薬品・医薬部外品・化粧品】 | 医薬品・医薬部外品・化粧品の製造販売業(第12条第1項) |
医薬品・医薬部外品・化粧品の製造業(第13条第1項) | |
【医療機器・体外診断用医薬品】 | 医療機器・体外診断用医薬品の製造販売業(第23条の2第1項) |
【医薬品】 | 医薬品の販売業(第24条第1項) |
【再生医療等製品】 | 再生医療等製品の製造販売業(第23条の20第1項) |
再生医療等製品の製造業(第23条の22第1項) | |
再生医療等製品の販売業(第40条の5第1項) | |
【高度管理医療機器等】 | 高度管理医療機器等の販売業及び貸与業(第39条第1項) |
【医療機器】 | 医療機器の修理業(第40条の2第1項) |
B:登録制
対象分野 | 具体的な内容 |
【医療機器・体外診断用医薬品】 | 医療機器・体外診断用医薬品の製造業(薬機法第23条の2の3第1項) |
2.医薬品等の取り扱いに関する違反

医薬品の販売や表示に関する取り扱いについて、ルールが設けられています。
次のルールを遵守し、違反しないよう努めましょう。
① 処方箋医薬品の販売
項目 | 具体的な内容 |
【処方箋の販売について】 | 医師・歯科医師・獣医師から処方箋の交付を受けていない者に対する販売の禁止(第49条第1項) |
② 直接の容器・被包への記載事項
項目 | 具体的な内容 |
【医薬品の表示・記載について】 | 直接の容器等の記載事項(第50条・第51条) 容器等への符号(バーコード)等の記載(第52条第1項) 添付文書等の記載事項(第52条第2項) 記載事項の記載方法(第53条) |
直接の容器等の記載事項
第五十条 医薬品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所
二 名称(日本薬局方に収められている医薬品にあつては日本薬局方において定められた名称、その他の医薬品で一般的名称があるものにあつてはその一般的名称)
三 製造番号又は製造記号
四 重量、容量又は個数等の内容量
五 日本薬局方に収められている医薬品にあつては、「日本薬局方」の文字及び日本薬局方において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項
六 要指導医薬品にあつては、厚生労働省令で定める事項
七 一般用医薬品にあつては、第三十六条の七第一項に規定する区分ごとに、厚生労働省令で定める事項
八 第四十一条第三項の規定によりその基準が定められた体外診断用医薬品にあつては、その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項
九 第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、貯法、有効期間その他その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項
十 日本薬局方に収められていない医薬品にあつては、その有効成分の名称(一般的名称があるものにあつては、その一般的名称)及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本質及び製造方法の要旨)
十一 習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、「注意―習慣性あり」の文字
十二 前条第一項の規定により厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、「注意―医師等の処方箋により使用すること」の文字
十三 厚生労働大臣が指定する医薬品にあつては、「注意―人体に使用しないこと」の文字
十四 厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、その使用の期限
十五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
第五十一条 医薬品の直接の容器又は直接の被包が小売のために包装されている場合において、その直接の容器又は直接の被包に記載された第四十四条第一項若しくは第二項又は前条各号に規定する事項が外部の容器又は外部の被包を透かして容易に見ることができないときは、その外部の容器又は外部の被包にも、同様の事項が記載されていなければならない。
容器等への符号等の記載
第五十二条 医薬品(次項に規定する医薬品を除く。)は、その容器又は被包に、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて厚生労働省令で定めるものにより、第六十八条の二第一項の規定により公表された同条第二項に規定する注意事項等情報を入手するために必要な番号、記号その他の符号が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
第五十二条
2 要指導医薬品、一般用医薬品その他の厚生労働省令で定める医薬品は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包に、当該医薬品に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意
二 日本薬局方に収められている医薬品にあつては、日本薬局方において当該医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
三 第四十一条第三項の規定によりその基準が定められた体外診断用医薬品にあつては、その基準において当該体外診断用医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
四 第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、その基準において当該医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
第五十三条 第四十四条第一項若しくは第二項又は第五十条から前条までに規定する事項の記載は、他の文字、記事、図画又は図案に比較して見やすい場所にされていなければならず、かつ、これらの事項については、厚生労働省令の定めるところにより、当該医薬品を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語による正確な記載がなければならない。
③ 記載禁止事項
項目 | 具体的な内容 |
【記載禁止事項について】 | 記載禁止事項(同法第54条)虚偽または誤解を招くおそれのある、 事項承認を受けていない効能・効果・性能保健衛生上危険がある用法・用量・使用期間 |
④ 違反医薬品の販売禁止
項目 | 具体的な内容 |
【違法医薬品の販売禁止について】 | 薬機法に違反する医薬品の販売・授与等の禁止(第55条) 薬機法に違反する医薬品の販売・製造等の禁止(第56条) |
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
3. 広告規制違反

薬機法は医薬品等の製造・販売だけでなく、広告についても、次の規制が定められています。
薬機法違反として見なされる行為は、次の3つの項目です。
- 虚偽・誇大広告等の禁止(第66条)
- 特定疾病用医薬品等の広告の制限(第67条)
- 承認前医薬品等の広告の禁止(第68条)
各項目の詳細について解説する前に、薬機法における広告の概要と対象範囲、対象者についてご紹介します。
前提として知っておきたい!薬機法における「広告」とは

薬機法における広告とは、消費者を誘引する意図(≒商品を販売しようする意思)が明確であり、特定医薬品等の商品名が明らかされていることに加え、一般人でも認知できるものを指しています。
広告と見なされるカテゴリーは、テレビや新聞をはじめ、雑誌、ラジオ、Webサイト、アフィリエイト広告、SNS広告など、広範囲に渡るのです。
また、対象者は、広告主や法人・個人か否かを問わず、広告制作に携わった、代理店・制作会社・ライター・インフルエンサーまで含まれます。(※フリーランスであるか否かも問われない)
つまり、違反広告に関係する、すべての人が対象となるため、慎重に取り扱うことが重要です。
従って、法律の専門家である弁護士にアドバイスを仰ぐというのも、薬機法における広告規制を正しく遵守するための選択肢ではないでしょうか。
① 虚偽・誇大広告等の禁止
先ほど、ご紹介した通り、規制の対象者は広告に関係するすべての人間です。
具体的には、医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布を禁止しています。
同じく、医薬品等の効果・効能・性能に対して、医師などが保証したと誤解されるおそれのある広告も規制事項の一つです。
また、堕胎を暗示するものやわいせつな文書・図画を用いることも禁止されているため、医薬品等の広告政策は慎重に努めましょう。
第66条:虚偽・誇大広告等の禁止
- 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
- 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
- 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
虚偽・誇大広告誇と見なされる表現の例
- 〇〇病が100%治る!革新的な医薬品
- 有名な〇〇医師の推奨商品
- 1ヶ月で10kg痩せる
- 副作用の心配がない
- 効き目最高
特に、効能効果・性能・安全性について、「承認の範囲」や「化粧品の効能の範囲」を超える表現、断定表現、最大級を示す表現は禁止されているため、ご注意ください。
② 特定疾病用の医薬品等に関する広告制限
がん・肉腫・白血病などに使用されることが目的とされている医薬品・再生医療等製品のうち、医薬関係者以外の一般人を対象とした広告は禁止されています。
上記のような医薬品・再生医療等製品は、使用にあたって高度な専門知識が必要です。
従って、医師をはじめとする医薬関係者を対象にした広告に限り、薬機法で認められています。
第67条:特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限
- 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
- 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
③ 未承認医薬品等に関する広告禁止
ただし、健康食品などの「食品」や歯ブラシをはじめとする「雑貨(健康・美容)」など、医薬品等に該当しないものであっても、「がんを防止する」など謳った場合には、薬機法違反になるケースがあります。
上記のような製品を「医薬品等と誤認させるような効能効果の表示・広告」を行った場合、つまり、「薬でないもの」を「薬」のように宣伝した際には、「未承認の医薬品等」と判断されるのです。
薬機法違反と見なされた場合には、懲役刑や罰金などの罰則が課せられてしまうため、薬機法における広告への理解を深めることが重要ではないでしょうか。
第68条:承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止
- 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
景品法との違い

「薬機法」と「景品表示法」との違いは、対象分野と対象者にあります。
前提として、景品表示法とは、不当な表示・景品類による強引な勧誘を抑止し、消費者が自主的かつ合理的にサービスを選択できるよう、消費者の利益を保護することを目的とした法律のことです。
目的:不当景品類及び不当表示防止法第一条
薬機法は医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品と規制の対象が定まっていますが、後者はすべての商品が対象です。
重ねて、前者は、広告に携わるすべて人が対象である一方で、後者は、商品または役務の取引を供給する事業者のみとされています。
薬機法に違反した場合のペナルティ

薬機法に違反した場合、次の処遇を受ける可能性があります。
- 行政処分
- 課徴金納付命令
- 刑事罰
それでは各項目ごとの詳細を解説していきます。
行政処分
薬機法に違反をした場合、課徴金納付命令の前に、行政処分の対象となります。
各段階にも順序があり、まずは「行政指導」となり、違法状態になっている内容を改めるよう命じ、報告書の提出を求められるのです。
その後、弁明の機会が与えられ、状況に応じ、さまざまな措置が施されます。
- 行政指導
- 業務改善命令
- 措置命令
- 業務停止命令
- 許可・登録の取消
- ★課徴金納付命令
行政処分の流れ | 具体的な内容 |
行政処分 | 【第70条第1項:製品の廃棄・回収命令】 医薬品等を業務上取り扱う者が品質不良・不正表示の製品など、薬機法に違反した医薬品等を販売した場合、公衆衛生上の危険を防止するため、違反行為に関連する医薬品等の廃棄・回収命令を受ける可能性がある。(要約) |
業務改善命令 | 【第72条第1項:業務改善・停止命令】 医薬品等の製造販売業者が医薬品等における、品質管理や安全管理の方法が基準に適合しない場合、業務改善命令または改善までの間、業務の一時停止を命じられる可能性がある。(要約) |
措置命令 | 【第72条の5第1項:措置命令】 次の項目に違反した場合、措置命令を受ける可能性がある。 虚偽・誇大広告等の禁止:第66条承認前医薬品等の広告の禁止:第68条 具体的には、違反広告を中止させるほか、再発防止のため、違反広告の公表などが命じられる。(要約) |
業務停止命令 | 2.と同内容 |
許可・登録の取消 | 【第75条第1項・第75条の2第1項:許可・登録の取消】 医薬品等の製造販売業者や販売業者が許可・登録の基準を満たしていない場合に加え、薬機法に違反した場合、製造・販売の許可・登録が取り消される可能性がある。(要約) |
課徴金納付命令 | 次の説をご覧ください。 |
なお、各項目の原文は、わかりやすいよう要約させていただきます。
第70条第1項:製品の廃棄・回収命令
医薬品等を業務上取り扱う者が品質不良や不正表示の製品など、薬機法に違反した医薬品等を販売した場合、公衆衛生上の危険を防止するため、違反行為に関連する医薬品等の廃棄・回収命令を受ける可能性があります。(要約)
第72条第1項:業務改善・停止命令
医薬品等の製造販売業者が医薬品等における、品質管理や安全管理の方法が基準に適合しない場合、業務改善命令または改善までの間、業務の一時停止を命じられる可能性があります。(要約)
第72条の5第1項:措置命令
次の項目に違反した場合、措置命令を受ける可能性があります。
- 虚偽・誇大広告等の禁止(第66条)
- 承認前医薬品等の広告の禁止(第68条)
具体的には、違反広告を中止させる他、再発防止のため、違反広告の公表などが命じられます。(要約)
第75条第1項、第75条の2第1項:許可・登録の取消
医薬品等の製造販売業者や販売業者が、許可・登録の基準を満たしていない場合に加え、薬機法に違反した場合、製造・販売の許可・登録が取り消される可能性があります。(要約)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
課徴金納付命令
第75条の5第2項:課徴金納付命令
薬機法に違反した場合、「課徴金納付命令」を受ける可能性があります。
2021年の薬機法改正において、近年増加しているインターネット広告における虚偽・誇大広告の違反行為の影響により、この「課徴金制度」が導入されました。
制度の対象は、第66条の「虚偽・誇大広告等の禁止」に違反した場合です。
課徴金は、虚偽・誇大広告を行っていた期間中に得られた売上金額の4.5%と定められています。(改正前の罰金額:〜200万円)
課徴金の対象期間は、違反行為の開始日から数えて、最長で3年間です。
ただし、次のようなケースでは、課徴金の減額や免除になる可能性があります。
- 対象となる売上金額が5,000万円未満の場合:課徴金の免除(課徴金納付命令の対象外)
- 違反行為の発覚前に違反者が自主的に申告した場合:課徴金額の50%減額
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
刑事罰
薬機法違反は、刑事罰の対象となる可能性があります。
主な違反行為と刑事罰の内容は、次のとおりです。
違反項目 | 違反内容 | 刑事罰の内容 |
第84条:無許可製造・販売 | 次の対象者が医薬品等を無許可で製造・販売した場合 ・医薬品の製造販売業(第12条第1項)・医薬品の販売業(第24条第1項) | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両方 |
第85条:虚偽・誇大広告 | ・虚偽・誇大広告等の禁止(同第66条)に違反した場合、 | 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方 |
第86条:特定疾病用の医薬品等に関する広告 | がん・肉腫・白血病など、特定疾病の治療薬に関する、一般人への広告の禁止(第67条)。 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または両方 |
重ねて、従業員が違反した場合、違反者本人だけでなく、法人にも罰金刑があることにもご留意ください。(第90条:両罰規定)
薬機法に違反しないためには専門家の力を借りること

ここまで、薬機法の概要をはじめ、薬機法の対象物やその内容、違反した際のリスクや罰則、注意すべきポイントについて解説をしてきました。
先ほどご紹介した通り、薬機法は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品に関連する法であり、特に広告規制に関しては、商品やサービスに関わるすべての関係者が対象となります。
薬機法に違反した場合、行政処分・課徴金納付命令・刑事罰の対象になる可能性があるため、一人ひとりが薬機法について学び、ルールを遵守するよう努めることが重要です。
ただし、薬機法等のリーガルチェックや書き換え表現を行うことは、専門性が高く、どれだけ確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
弁護士をはじめとする法律の専門家に依頼することで、不正確な情報の発信やトラブルを未然に防げるだけでなく、製品を使用する消費者の安全性を守ることにも繋がります。
XP法律事務所では薬機法に関するリーガルチェックや法律に則った訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。
広告規制に関する助言や審査、薬機法についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。
こちらの記事は、2023年11月10日時点の情報です。
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