薬機法(旧薬事法)

【2024年最新】美容と健康市場に欠かせない、薬機法におけるサプリメントの広告表現を徹底解説

昨今、SNSやネット広告において、サプリメントにまつわる広告を目にする方も少なくないのではないでしょうか。知らず知らずのうちに薬機法をはじめとする法律に違反し、懲役刑や罰金などの罰則が適用されることになったというトラブルを防ぐためにも、薬機法に基づいたサプリメントの広告表現と規制事項について、解説させていただきます。

【2024年最新】美容と健康市場に欠かせない、薬機法におけるサプリメントの広告表現を徹底解説

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昨今、SNS(ソーシャルメディア)やネット広告において、「有名モデルや韓国のアイドルも愛用している」などのキャッチフレーズとともに、サプリメントにまつわる広告を目にする方も少なくないのではないでしょうか。

サプリメント市場では、健康や美容に関心を持つ多くの消費者に向け、効果効能を魅力的に広告し、効果的に集客を行うことが一般的です。

しかし、広告を行う際には、薬機法をはじめとする法的な制約を遵守した上で、正確かつ客観的な情報発信が求められます。

特に、薬機法に該当する製品の「広告」を行う場合には、製造者や販売者だけでなく、広告代理店・制作会社・ライター・インフルエンサーなども対象となることから、薬機法について、正しく理解することが重要です。

知らず知らずのうちに法律に違反し、懲役刑や罰金などの罰則が適用されることになったというトラブルを防ぐためにも、薬機法に基づいたサプリメントの広告表現規制事項について、解説させていただきます。

XP法律事務所では、サプリメントをはじめとする美容と健康市場に携わる方へ向け、薬機法のリーガルチェック訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。

特に、美容と健康市場における広告表現規制に関連する法令は、「薬機法」とこの法令に係る「化粧品等の適正広告ガイドライン」「医薬品等適正広告基準」をはじめ、「景品表示法」など、経営に関する部分まで、網羅的に判断する必要があります。

法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。

美容と健康市場に係る広告に関する助言審査薬機法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。

サプリメントと関わりがあると言われる「薬機法」とは

サプリメントの広告表現と規制事項についてご紹介するにあたり、まず「薬機法」についてご紹介する必要があります。

「薬機法」とは、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」を略した名称のことです。

以前は「薬事法(やくじほう)」と呼ばれていましたが、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、現在の名称に変更されました。

薬機法の目的は、「製品の安全性と品質を確保し、保健衛生の向上を図ること」であり、薬機法の対象となる製品の製造や販売をはじめ、流通や表示、広告に関する規律を行っています。

第1条:目的

この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

薬機法の規制対象となる分野は、次の通りとなっており、これらの製品を総称し、「医薬品等」と呼びます。

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品

各分野についての簡単にまとめられた概要については、次の表をご覧ください。

分野定義と目的
1. 医薬品【人や動物の病気の診断・治療・予防に使用されることを目的としたもの】
■ 厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書である「日本薬局方」に記載されているもの
2. 医薬部外品【医薬品に比べ、人体への作用が緩和なもの】
■ 吐き気やその他の不快感、口臭・体臭を防止するもの
■ あせも・ただれ等を防止するもの
■ 脱毛の防止・育毛または除毛などの美容を目的としたもの
■ ねずみ・はえ・蚊・のみなどの生物の防除を使用目的とした、機械器具等でないもの
■「薬用化粧品」
3. 化粧品【人体に対する作用が緩和で、人の身体を清潔にしたり、美化し、魅力を増すことを目的とする他、容貌を変えるために使用されるもの】
■ 「医薬品」としての使用目的を併せ持つものや「医薬部外品」を除外したもの
4. 医療機器【病気の診断・治療・予防に用いられる機器のこと】
■ 身体の構造や機能に影響を及ぼすための機械器具等
5. 再生医療等製品【医療または獣医療において、治療または予防することに用いられる、細胞に培養またはその他の加工を施したもののこと】
■ 身体の構造や機能の再建・修復、形成や疾病の治療・予防、遺伝子治療などを目的とするもののこと

薬機法についての詳細については、こちらの記事をご覧ください。

薬機法の概要と規制分野についてご紹介したところで、次の章では、薬機法における「サプリメント」の立ち位置について解説させていただきます。

薬機法における「サプリメント」の立ち位置とは

こちらの章では、薬機法における「サプリメント」の定義についてご紹介します。

結論として、健康食品と呼称されるサプリメントが分類されるのは、薬機法の規制の対象外となる「食品」です。

前提として、食品の定義について「食品衛生法」では、次のように定義されています。

第4条 この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。

また、いわゆる健康食品の定義については、厚生労働省が次のように記載しています。

いわゆる「健康食品」と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているものを呼びます。

健康食品と医薬品の区分については、次の表をご覧ください。

押さえておきたいポイント

口から摂取するものは、「食品」「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」のいずれかに分類される。

また、上記の表に記載された項目の概要については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
いわゆる健康食品医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているもの
機能性表示食品機能性関与成分によって特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示する食品
栄養機能食品特定の栄養成分を含むものとして国が定める基準に従い当該栄養成分の機能を表示する食品
特定保健用食品生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含んでおり、個別に有効性及び安全性等に関する国の審査を受け、特定の保健の目的が期待できる旨の表示を許可または承認された食品
医薬品人や動物の病気の診断・治療・予防に使用されることを目的としたもの

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について 

サプリメントが薬機法に接触する可能性と判断基準

先に、サプリメントをはじめとする「健康食品」は、薬機法の規制の対象外とご紹介しました。

しかし、食品であるにも関わらず、医薬品的な効果・効能を標ぼうするなど、厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」で設けられた下記の基準に該当する場合、医薬品と見なされ、薬機法に接触する可能性があります。

  1. 成分
  2. 効果・効能
  3. 形状
  4. 用法・用量

また、2種以上の成分が配合されており、いずれかの成分が医薬品と判定される場合も同等の扱いです。

ただし、次の条件に該当する場合に限り医薬品の対象外となります。

  • 上記の成分が薬理作用の期待できない程度の量を含有しており、着色・着香等の目的のために使用されているものと認められている場合
  • 「上記の成分を含有する旨を標ぼうしない場合」または「含有する旨を標ぼうしても使用目的を併記する場合など、総合的に判断して医薬品と認識されるおそれのないことが明らかな場合」

1. 成分

サプリメントに含有される成分により、医薬品であるか否かの判断が下されます。

具体的には、厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト(医薬品)」に記載された成分を使用したサプリメントの場合、医薬品に該当します。

含有されている成分を記載した場合、事実であっても、薬機法違反となるため、注意しましょう。

一方、医薬品に該当しない成分については、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト(非医薬品リスト)を参考にして下さい。

重ねて、成分の本質がどのようなものかは、対象となるものの【成分・本質・起源・製法等に関する表示・販売時の説明・広告等の内容】に基づいて判断されます。

従って、後ほどご紹介しますが、成分の記載だけでなく、サプリメントの広告を行う際にも、規定に従う必要があることにご留意ください。

2. 効果・効能

サプリメントの効果・効能を標ぼうする場合にも、医薬品であると判断されることがあります。

具体的には、【容器・包装・添付文書・チラシ・パンフレット・刊行物・インターネットなどの広告宣伝物・演述】において、特定の効果・効能が表示されている場合、医薬品的な効果・効能を標ぼうしているものとされるのです。

ここで注意したいポイントとして、サプリメントの購入を促進する効果的な宣伝ツールとして多くの企業に利用される、InstagramやTikTok、TwitterなどのSNS(ソーシャルメディア)も広告に該当するため、取り扱いには慎重になりましょう。

ただし、栄養成分の機能の表示をする「栄養機能食品」の場合、食品表示基準に基づき、内閣総理大臣が定める基準に従い、医薬品的な効果・効能であると判断されないことが明記されています。

具体例は、次の表をご覧ください。重ねて、冒頭に触れた、「ダイエット(生活習慣病)」「スキンケア」など、身体の変化について言及する表現は、薬機法に接触する可能性があるため、ご注意ください。

医薬品的な効果・効能の標ぼう具体例
1. 疾病の治療又は予防を目的とする効果・効能■ 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に
■ 胃・十二指腸潰瘍の予防
■ 肝障害・ 腎障害をなおす
■ ガンがよくなる
■ 眼病の人のために
■ 便秘がなおる等
2. 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果・効能
※栄養補給・健康維持等に関する表現は除く
■ 疲労回復
■ 強精(強性)強壮、回春、若返り、精力をつける
■ 体力増強、成長促進、新陳代謝を盛んにする
■ 食欲増進
■ 老化防止
■ 勉学能力を高める
■ 内分泌機能を盛んにする
■ 胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸
■ 解毒機能を高める
■ 心臓の働きを高める
■ 血液を浄化する
■ 病気に対する自然治癒能力が増す、病中・病後等
3. 医薬品的な効能効果の暗示 【名称またはキャッチフレーズよりみて暗示するもの】
■ 延命〇〇、〇〇の精(不死源)、百寿の精、不老長寿百寿の精
■ 薬〇〇
■ 漢方秘法、皇漢処方
■ 和漢伝方等

【含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの】
■ 体質改善
■ 「健胃整腸で知られる〇〇を原料としこれに有用成分を添加」
■ 相乗効果をもつ等

【製法の説明よりみて暗示するもの】
■ 「本邦の深山高原に自生する植物〇〇を主剤に」
■ 「〇〇、〇〇等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。」等 

【起源・由来等の説明よりみて暗示するもの】
■ 「〇〇という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、 消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。」等 

【新聞・雑誌等の記事、医師・学者等の談話、学説、経験談などを引用または掲載することにより暗示するもの】
■  「医学博士〇〇の談『昔から赤飯に〇〇をかけて食べると癌にかからぬといわれている。 癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と〇〇が結びつきはしないかと考えられる。』」等

無承認無許可医薬品の指導取締りについて

3. 形状

【錠剤・丸剤・カプセル剤・アンプル剤のような剤型】が一般に医薬品に用いられる剤型であるという認識が浸透していることから、サプリメントの形状も医薬品であるか否かの判断基準の一つです。

ただし、「食品」である旨が明示されている場合、形状という要素だけで医薬品に該当するか否かの判断は行わないよう定められています。

ただし、アンプル形状など、一般的な食品としては流通しない形状を用いることには、注意が必要です。

具体的には、容器または被包の形態などが市販されている医薬品と同じ印象を与えるため、消費者に医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合は、医薬品と判断される可能性があります。

これらの剤型は、医薬品的な効果を有するものが多く、その容器または被包の形態などが市販されている医薬品と同じ印象を与える可能性が高いため、注意しましょう。

重ねて、医薬品的な形状を強調したサプリメントの広告を行うことも薬機法に接触する可能性があるため、規定の範囲内で効果的に宣伝することが大切です。

4. 用法・用量

サプリメントが医薬品であるか否かの判断基準に、用法・用量にまつわる記載が挙げられます。

一般的に、医薬品は治療または予防効果を発揮し、安全性を確保するため、詳細な用法・用量が定められることが必要不可欠であるとされています。

従って、【服用時期・服用間隔・服用量】などの記載がある場合、医薬品的な用法・用量であると判断される可能性が高いです。

ただし、調理を目的とした上で、使用方法・ 使用量等を定めているものであれば問題ありません。

重ねて、食品であっても、過剰摂取や連用による健康被害が起きる危険性、その他の合理的な理由がある場合、医薬品的な用法・用量に該当しない記載の仕方で、【摂取の時期・間隔・量等】の目安を表示することは差し支えないとされます。

記載の際に医薬品と誤認させることを目的としている場合、医薬品的な用法・用量の表示であるとされることにご留意ください。

医薬品的な用法・用量の表現

1日2〜3回、1回2〜3粒、1日2個 毎食後、添付のサジで2杯づつ、成人1日3〜6錠 食前、食後に1〜2個づつ、お休み前に1〜2粒

 薬機法の広告規制の対象となる媒体や対象者について

サプリメント広告の際に注意したい薬機法の広告規制についてご紹介する際に、薬機法の広告の定義と対象となる広告媒体、対象者についてご紹介させていただきます。

前提として、薬機法における「広告」の定義は、次の通りです。

  1. 消費者を誘引する意図が明確
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかされている
  3. 一般人でも認知できるもの

薬機法の対象となる広告媒体

薬機法において広告と見なされるカテゴリーは、「一般消費者向けのすべての広告媒体」となっており、広告を掲載した媒体そのものを指します。

薬機法に係る分野の商品を販売することを目的で作成された広告に関しては、薬機法における広告であると考えると良いでしょう。

本記事のメインテーマであるサプリメントを広告する際には、先にご紹介した、医薬品の判断基準【成分、効果・効能、形状、用法・用量】に該当する製品を広告する際には、薬機法の対象となることにご留意ください。

一般消費者向けのすべての広告媒体の具体例は、次の表をご覧ください。

広告の対象
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・インターネットなどによる製品の広告製品のチラシ・ポスター・パンフレット小冊子・書籍
新聞、雑誌などの切り抜き、書籍や学術論文等の抜粋会員誌・情報誌告SNS(Instagram・TikTok・twitterなど)
電子メール・DM(ダイレクトメール)アフェリエイト広告製品の容器、包装、添付文書などの表示物
使用経験者の感謝文、体験談集代理店、販売店に教育用と称して配布される商品説明(関連)資料店内および車内等におけるつり広告
店頭、訪問先、説明会、相談会、キャッチセールス等においてスライド、ビデオ等又は口頭で行われる演述等

薬機法の対象者

薬機法では、広告を掲載した媒体だけでなく、対象者についても規定が定められています。

薬機法における広告規制の対象者は「何人も」、つまり薬機法の対象分野に関する広告に関わる「すべての人」です。

法人・個人、フリーランスであるか否かは問わず、広告主だけでなく、サプリメントの広告ツールとして選択される傾向の高い、SNSにおける情報発信者まで、薬機法の広告規制の対象者となることにご留意ください。

広告規制の対象者については、次の表をご覧ください。

広告規制の対象者
広告主メディア運営事業者
広告代理店広告ツール事業者
広告関係企業レビューサイト運営事業者
新聞社雑誌社・出版社
テレビ放送局ラジオ放送局
ライターアフィリエイトサービスプロバイダー
アフェリエイターインフルエンサー

サプリメント広告の際に気をつけたい「薬機法」における広告の定義

こちらの章では、前章でご紹介した通り、サプリメント広告をする際に注意したい、「薬機法」の広告の定義と該当となる媒体や対象者について解説させていただきます。

前提として、薬機法では、規制分野である医薬品等の製造・販売だけでなく、広告についても規制を設けており、これに違反した場合には、厳しい罰則が課せられます。

薬機法の対象分野の製品について広告を行う場合には、次の規定が設けられています。

  • 虚偽・誇大広告等の禁止(第66条)
  • 特定疾病用医薬品等の広告の制限(第67条)
  • 承認前医薬品等の広告の禁止(第68条)

それでは、各項目について、ご紹介させていただきます。

1. 虚偽・誇大広告等の禁止

薬機法の広告規制では、明示的・暗示的を問わず、医薬品等の虚偽・誇大広告等を行うことを禁止しています。

サプリメントについて、虚偽・誇大広告することにより、消費者が効能・効果について過大な期待を抱かせてしまう他、医薬品と誤認させることで、適正な医療を受ける機会を失わせる可能性もあります。

サプリメントの魅力をアピールする際には、効果や性能について、事実に基づく表現を徹底しましょう。

詳細については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
虚偽・誇大広告等の禁止【第66条】医薬品等の《名称・製造方法・効能・効果・性能》に関して、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布を禁止
【禁止】医薬品等の効果・効能・性能に対して、医師などが保証したと誤解されるおそれのある広告【禁止】堕胎を暗示するものやわいせつな文書・図画を用いること

第66条:虚偽・誇大広告等の禁止 

1 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

2. 特定疾病用医薬品等の広告の制限

薬機法の広告規制では、特定疾病用医薬品等の広告を行うことを禁止しています。

特定疾病用医薬品等を制限する理由として、がんや白血病などに対し使用されることを目的とした製品を扱う際には、安全性の担保が求められるだけでなく、高度な専門知識を要するといった理由が挙げられるためです。

また、医薬品として使用されている成分を含有した 「サプリメント」は、摂取した消費者に保健衛生上の危害を生じさせる恐れがあります。

サプリメントの製造・販売業者が薬機を遵守した製品を提供することはもちろんのこと、当該サプリメントを広告する側についても、記載する表現には慎重になることが重要です。

詳細については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
特定疾病用医薬品等の広告の制限【第67条】がん・肉腫・白血病などに使用されることが目的とされている医薬品・再生医療等製品のうち、医薬関係者以外の一般人を対象とした広告は禁止
◎ 医師をはじめとする医薬関係者を対象にした広告に限り、広告可能

第67条:特定疾病用医薬品等の広告の制限

1 生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。

2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

3. 承認前医薬品等の広告の禁止

薬機法の広告規制において、承認前医薬品等の広告を行うことを禁止しています。

サプリメントをはじめとする健康食品など、医薬品に該当しない製品に対し、『がんを防止する』など、「薬でないもの」を「薬」のように宣伝した場合、「未承認の医薬品」であると判断されます。

反対に、医薬品に概要するものが「サプリメント」として販売された際には、消費者の医薬品に対する認識を混乱させる可能性もあるため、注意が必要です。

違反した場合、薬機法以外の法律にも接触してしまうため、ご注意ください。

項目具体的な内容
承認前医薬品等の広告の禁止【第68条】医薬品等に該当しない製品を「医薬品等と誤認させるような効能効果の表示・広告」を行う広告は禁止
【禁止】薬でないものを「薬」のように宣伝すること

第68条:承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

1 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

サプリメントをはじめとする健康食品の表現可能な範囲

サプリメントをはじめとする健康食品の表現の範囲について、健康増進法(第65条第1項)において、次のように定めています。

第65条第1項

「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項((中略)「健康 保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない」

サプリメントが薬機法に接触する可能性と判断基準の効果・効能の部分と重なる部分はありますが、「健康保持増進効果等」について、著しく事実に相違する表示や誤認させる表示をする場合、虚偽誇大表示に該当することになるため、注意しましょう。

消費者庁が提示する「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」では、サプリメントをはじめとする健康食品の表現の範囲について規定を設けています。

それでは、健康食品に係る禁止表現について、順にご紹介します。

1.「健康の保持増進の効果」

健康状態の改善または健康状態の維持の効果を意味する「健康保持増進の効果」については、次の表現を禁止しています。

こちらの禁止事項で主に規制されているのは、「効果・効能」の標ぼうです。

医薬品的な効果・効能を標ぼうするものは、薬機法上の「医薬品」とみなされます。

(野菜・果物・調理品等その外観、形状等を除き)薬機法上の承認を受けずにその名称、製造方法、効能、効果に関する広告をしてはならないと定められているのです。(医薬品医療機器等法第68条)

医薬品的な表示を行う場合、その表示が著しく事実に相違するものであるか著しく人を誤認させる表示であるかを問わず、医薬品としての承認を受けない限り、表示することはできないことをご留意ください。

特に、サプリメント広告でよく目にするダイエットやアンチエイジング効果を謳う表現には注意しましょう。

具体例については、次の表をご覧ください。

規制表現具体例
A. 疾病の治療又は予防を目的とする効果《治療》
「糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に」
「末期ガンが治る」
「アレルギー症状を緩和する」
「花粉症に効果あり」
「便秘改善」

《予防》
「虫歯にならない」
「生活習慣病予防」
「骨粗しょう症予防」
「インフルエンザ、コロナウイルスの予防に」
「認知症予防」
B. 身体の組織機能の一般的増強・増進を目的とする効果「疲労回復」「集中力を高める」
「体力増強」「食欲増進」
「強精(強性)強壮」
「新陳代謝を盛んにする」

「老化防止」★「若返り」★「アンチエイジング」「歩行能力改善」

「免疫機能の向上」「免疫力を高める」「疾病に対する治癒力を増強します」

「細胞の活性化」「治癒力が増す」

★「脂肪燃焼を促進」

「〇〇は、活性酸素除去酵素を増加させます」
C. 特定の保健の用途に適する旨の効果【健康の維持・増進に役立つまた適する旨を表現するもの】
(ア)容易に測定可能な体調の指標の維持に適するまたは改善に役立つ旨 
(イ)身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適するまたは改善に役立つ旨 
(ウ)身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の   変化の改善に役立つ旨 
(エ)疾病リスクの低減に資する旨(医学的、栄養学的に広く確立されているもの)

「本品はおなかの調子を整えます」
「この製品は血圧が高めの方に適する」
「コレステロー ルの吸収を抑える」
「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」
「体脂肪を減らすのを助ける」
 「本品は骨密度を高める働きのある◯◯(成分名)を含んでおり、骨の健康が気になる方に 適する」
「本品には◯◯(成分名)が含まれます。◯◯(成分名)には食事の脂肪や糖分 の吸収を抑える機能があることが報告されています。」
D. 栄養成分の効果「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」
「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの 吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

2. 内閣府令で定める事項

「内閣政令で定める事項」について主に規制されているのは、「成分」「効果」の標ぼうを禁止しています。

サプリメント広告で使用してしまいがちな、カロリー表示や美肌・美白効果、体型の変化を伴う表現には慎重になることが大切です。

具体例については、次の表をご覧ください。

規制表現具体例
A. 含有する食品または成分の量「大豆が◯◯g含まれている」「カルシウム◯◯mg配合」
B. 特定の食品または成分を含有する旨「プロポリス含有」「○○抽出エキスを使用しています」
C. 熱量★「カロリー〇〇%オフ」★「エネルギー 0kcal」
D. 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を 健やかに保つことに資する効果【薬機法の「化粧品」と等しい効果】
★「美肌・美白効果が得られます」
★「皮膚にうるおいを与えます」
★「美しい理想の体形に」

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

3.「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの

サプリメントについて広告を行う場合、「健康保持増進効果等」を暗示的または間接的に表現するものであっても、「健康保持増進効果等」についての表示と見なされ、虚偽誇大表示に該当する可能性があります。

繰り返しとなりますが、明らかに食品と認識される物に関して虚偽・誇大な表示をするときは、健康増進法の規制の対象となることに留意しましょう。

注意すべき表現の具体例については、次の表をご覧ください。

規制表現具体例
A. 名称またはキャッチフレーズにより表示するもの「ほね元気」
「延命〇〇」
「妊活」
「腸活」「快便食品(特許第〇〇号)」
★「スリム〇〇」「減脂〇〇」
「血糖下降茶」★「血液サラサラ」
★「デトックス〇〇」「カラダにたまった余分なものをスッキリ」
B. 含有成分の表示及び説明により表示するもの「腸内環境を改善することで知られる〇〇を原料とし、これに有効成分を添加することに よって、相乗効果を発揮!」

「〇〇(成分名)は、不飽和脂肪酸の一種で、血液をサラサラにします」

「〇〇(成分名)は、関節部分の軟骨の再生・再形成を促し、中高年の方々の関節 のケアに最適です」
C. 起源・由来等の説明により表示するもの『〇〇』という古い自然科学書をみると〇〇は肥満を防止し、消化を助けるとある。 こうした経験が昔から伝えられていたが故に、〇〇は食膳に必ず備えられたものである。」

 「〇〇(国名)では医薬品として販売されています」

「欧州では循環器系の薬として、〇〇 が使用されています」
D. 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの「こんなお悩みありませんか?『疲れが取れない。『健康診断で〇〇の指摘を受けた。』『運動や食事制限が苦手。』『いつもリバウンドしてしまう。』『メタボが気になる。』

「最近、体力の衰えを感じるのは、〇〇が不足しているせいかもしれません。」

「年齢とともに、低下する〇〇成分」
E. 新聞・雑誌等の記事、医師・学者等の談話やアンケート結果、学説、 体験談などを引用または掲載することにより表示するもの〇〇(〇〇県、〇〇歳) 「〇〇を3か月間毎朝続けて食べたら、9㎏痩せました。」

 〇〇医科大学△△△教授の談 「発がん性物質を与えたマウスに〇〇の抽出成分を食べさせたところ、何もしなかったマウ スよりもかなり低い発ガン率だったことが発表されました」

「〇〇%の医師の方が、『〇〇製品の利用をおススメする』と回答しました」

 「管理栄養士が推奨する〇〇成分を配合」
F. 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する 行政機関や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの「〇〇国政府認可〇〇食品」
「〇〇研究所推薦〇〇食品」

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

薬機法に違反した場合のリスク

「広告規制」をはじめ、薬機法に違反した場合には、次の処遇を受ける可能性があります。

  • 行政処分
  • 課徴金納付命令
  • 刑事罰

違反行為により、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性もあります。

従って、薬機法について正しい知識を学ぶことはもちろん、一人ひとりが法律を遵守するよう努めることが重要です。

また、トラブルを未然に防ぐためにも、広告作成時に社内マニュアルを作成したり、フリーランスやインフルエンサーなど、委託先まで管理体制を徹底することをおすすめします。

薬機法に違反する前に、法律の専門家である弁護士に相談するなど、遵守状況など、具体的にアドバイスを仰ぎ、法律遵守に努めましょう。

各項目の概要については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
1. 行政指導【行政指導は段階的に行われ、命令に従わない場合には、課徴金納付命令が下される】

《行政処分までの流れ》
1. 行政処分
2. 業務改善命令
3. 措置命令
4. 業務停止命令
5. 許可・登録の取消
6. 課徴金納付命令★
2. 課徴金納付命令【第66条「虚偽・誇大広告等の禁止」に違反した場合】

■ 支払い金額:虚偽・誇大広告を行っていた期間中に得られた売上金額の4.5%
■ 支払い期間:違反行為の開始日から数えて、最長で3年間
3. 刑事罰【 第84条「無許可製造・販売」に違反した場合】
■ 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方

【第85条「虚偽・誇大広告」に違反した場合】
■ 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方

【第86条「特定疾病用の医薬品等に関する広告」に違反した場合】
■ 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方

各違反行為の詳細については、こちらの記事をご参考にしてください。

サプリメントの広告表現に関するご相談はXP法律事務所へ

ここまで、薬機法に基づいたサプリメントの広告表現と規制事項など、美容と健康市場を取り巻く規制について解説をしてきました。

サプリメント自体は薬機法の規制対象ではありませんが、医薬品ではないにも関わらず、医薬品的な効果・効能を標ぼうするなど、厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」で設けられた下記の基準に該当する場合、医薬品と見なされ、薬機法に接触する可能性があります。

繰り返しとなりますが、薬機法に違反した場合には、行政処分・課徴金納付命令・刑事罰の対象となる可能性があります。

特に、薬機法に係る広告規制に関しては、広告主や法人・個人か、フリーランスであるか否かを問わず、広告にに携わった全ての人が(薬機法の)“対象者の1人”と見なされるため、一人ひとりが法律を遵守するよう努めることが大切です。

XP法律事務所では、サプリメントをはじめとする美容と健康市場に携わる方へ向け、薬機法のリーガルチェック訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。

特に、薬機法の訴求表現を行うことは、専門性が高く、どれだけ確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

弁護士をはじめとする法律の専門家に依頼することで、不正確な情報の発信やトラブルを未然に防げるだけでなく、サービスを利用する消費者の安全性を守ることにも繋がります。

法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。

サプリメントをはじめとする美容と健康市場に向けての広告に関する助言や審査、薬機法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。

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