薬機法(旧薬事法)
【2024年最新】広報担当者必見!景品表示法におけるサプリメントの広告表現と規制を徹底解説!
世界的に健康志向が高まる中、サプリメントなどの健康食品の普及が進み、SNSやインターネット等を活用した広告・宣伝も増加しています。一方で、虚偽または誇大と疑われる不当な表示の広告が流通しているにも現実です。法的リスクを未然に防ぐためにも、景品表示におけるサプリメントの広告表現と規制事項について、徹底解説させていただきます。

arrow_drop_down 目次
コロナウイルスといった感染症を経験したことで、世界的に健康志向が高まる今日この頃。
その風潮の中で、サプリメントをはじめとする健康食品の普及が進み、SNS(ソーシャルメディア)やインターネット等を活用した広告・宣伝も増加しています。
一方で、健康食品に関する広告・宣伝の中には、実証されていない効果を期待させる虚偽または誇大と疑われる広告や不当な表示であることに懸念が寄せられている広告も流通しているのも現実です。
これら虚偽・誇大広告等は、「景品表示法」の違反行為である「不当表示」に該当し、
課徴金納付命令や懲役刑をはじめとする処罰の対象となります。
万が一、景品表示法に違反した場合、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性もあるのです。
法的リスクを未然に防ぐためにも、景品表示におけるサプリメントの広告表現と規制事項について、弁護士目線で徹底解説させていただきます。
XP法律事務所では、サプリメントをはじめとする美容と健康市場に携わる方へ向け、景品表示のリーガルチェックや訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。
特に、美容と健康市場における広告表現規制に関連する法令は、「景品表示法」をはじめ、
「健康増進法」、「薬機法」とこの法令に係る「化粧品等の適正広告ガイドライン」や「医薬品等適正広告基準」、「食品として販売に供する物に関して行う 健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)」及び「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項」など、法律やガイドラインを網羅的に判断する必要があります。
法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。
美容と健康市場に係る広告に関する助言や審査、薬機法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。
サプリメントと深く関わりのある「景品表示法」とは

サプリメントと「景品表示法(けいひんひょうじほう)」の関係性について解説するにあたって、まずは景品表示法の概要についてご紹介する必要があります。
「景品表示法(景表法)」とは、正式名称「不当景品類及び不当表示防止法」を略した名称のことです。
消費者が適切に商品・サービスの選択ができるよう、商品や役務(サービス)の取引を行うにあたって、不当な景品類や表示による消費者の誘引を防止するための法律です。
また、景品表示法における「景品」の意味は次の通りです。
- 顧客を誘引するための⼿段
- 事業者が⾃⼰の供給する商品または役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む)に付随して相手方に提供する物品
- 金銭その他の経済上の利益であって、*内閣総理大臣が指定するもの
重ねて、上記 3.「*内閣総理大臣が指定するもの」とは、次の項目を指します。
- 物品・⼟地・建物・その他の⼯作物
- ⾦銭・⾦券・預⾦証書・当せん⾦付証票及び公社債・株券・商品券その他の有価証券
- きょう応(映画・演劇・スポーツ・旅⾏・その他の催物等への招待または優待を含む)
- 便益・労務・その他の役務
つまり、サプリメントも「景品表示法」の対象になるのです。
ただし、下記の項目は、景品に含まれないことにご留意ください。
- 正常な商慣習(商取引の過程において形成された慣習)において、値引またはアフターサービスと認められる経済上の利益
- 正常な商慣習おいて、その取引に係る商品または役務(サービス)に付属すると認められる経済上の利益
- 組合せ商品や詰合せ商品等
薬機法とサプリメントの関係性については、こちらの記事をご覧ください。
景品表示法における「サプリメント」の立ち位置とは
先ほど、サプリメントは景品表示法の対象となるとご紹介しました。
こちらの章でご紹介するのは、景品表示法における「サプリメント」の位置付けについてです。
上記を解説するにあたって、前提知識として、健康食品と呼称されるサプリメントが分類されるのは、薬機法の規制の対象外となる「食品」となっていることに加え、いわゆる健康食品の定義については、厚生労働省が次のように記載しています。
いわゆる「健康食品」と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているものを呼びます。
健康食品と医薬品との相違点や判断基準については、こちらの記事をご覧ください。
景品表示法における「サプリメント」の位置付けについて、解説するにあたって、景品表示法の規制の対象となる「表示」についてご説明する必要があります。
消費者庁のガイドライン「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」に記載された、景品表示法における「表示」とは、次の通りです。
法第二条第四項に規定する表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、 次に掲げるものをいう。
一 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
三 ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、 ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又 は実演による広告
四 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含 む。)、映写、演劇又は電光による広告
五 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通 信等によるものを含む。)
つまり、現在行われている、多くの表示や広告が対象となっていることがわかります。
具体的には、商品や容器・包装になされた表示をはじめ、テレビ、インターネット、 チラシ、パンフレット、新聞、雑誌による広告まで規制されており、昨今利用者が増加しているSNS(ソーシャルメディア)も規制の対象の一つです。
従って、サプリメントについて、広告・表示を行う際には、景品表示法の規制の対象となるため、広告・表示に関する規制事項についてしっかりと学び、法律を遵守する必要があります。
次の章では、景品表示法における規制事項についてご紹介させていただきます。
景品表示法における不当表示の規制事項
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)では、大きく分類し、次の項目に制限を設けています。
今回、景品表示法におけるサプリメントの広告・表示に関する規制をご説明させていただくにあたって、①不当表示の禁止 について解説させていただきます。
景品表示法における不当表示とは次の項目の通りです。
- 優良誤認表示(不実証広告規制)
- 有利誤認表示
- その他 誤認されるおそれのある表示の禁止
それでは、各項目について、ご紹介いたします。
1. 優良誤認表示

景品表示法における1つ目の規制事項は、「優良誤認表示」です。
第5条1項
1 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
「優良誤認表示」では、消費者に対し、自己(≒自社)が提供する商品やサービスの【品質・規格・その他の内容】について、次のように表示することを禁止しています。
- 実際の商品やサービスよりも著しく優良であると表示すること
- 事実に反して、競合事業者よりも著しく優良であると表示すること
サプリメントに関する広告や表示を行う場合、合理的な根拠のない効果・効能を標ぼうすることは、優良誤認表示規制の対象となるため、ご注意ください。
特に、企業が商品やサービスに関する合理的な根拠を提示することは、一般消費者が適正な選択をするための重要な務めでもあります。
従って、客観的に実証された、次の内容に該当するか否かという点に加え、表示された効果と実証された内容が適切に対応しているか、しっかりと見極めましょう。
- 試験や調査により得られた結果
- 専門家・専門家団体・専門機関の見解や学術文献
「〇〇サプリメントは皆さまに選ばれて7冠達成」 「日本No.1 トレンド!美容の〇〇サプリメントは口コミで大人気」「〇〇サプリメントは、カロリーを速攻カットしてダイエット効果抜群!」
優良誤認表示で気をつけるべきポイント

「景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)」では、消費者が適正にサービスを選択できる環境を守ることを目的に「不実証広告規制」を制定しています。
商品や役務(サービス)の内容【効果・性能】の表示内容について、先にご紹介した「優良誤認表示」に違反した疑いがある場合、その事業者に対し、先にご紹介した合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる制度です。
特に、健康と美容分野に深い関わりのあるサプリメントは、「薬機法」における化粧品の
定義である『人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を 健やかに保つことに資する効果』の表示を行うことには注意しましょう。
合理的な根拠であるか否か、次の判断基準を設けています。
- 提出資料が客観的に実証された内容
- 表示された効果・性能に加え、提出資料により、実証された内容が適切に対応していること
合理的な根拠に関する資料を15日以内という期日通りに提出できない場合、優良誤認表示の規制の対象となるため、ご注意ください。
「最高のダイエット〇〇サプリメント」 「 絶対に痩せられる〇〇サプリ」「もう運動する必要ゼロ! 飲むだけで簡単に痩せられる」
第7条2項・第8条3項
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(7条2項)課徴金納付命令との関係では不当表示と推定される(8条3項)。
2. 有利誤認表示

景品表示法における2つ目の規制事項は、「有利誤認表示」です。
第5条2項
2 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
具体的には、商品や役務(サービス)の【価格や取引条件(数量・アフターサービス・保証期間・支払い条件)】について、次のように表示することを禁止しています。
- 商品やサービスの取引条件について、実際よりも著しく有利であると消費者に誤認される表示
- 商品やサービスの取引条件について、競合事業者に比べ、著しく有利であると消費者に誤認される表示
重ねて、商品やサービスの販売価格を記載する際に、自己(≒自社)の販売価格よりも高い他の価格を併記し、表示することを「二重価格表示」と呼びます。
昨今、サプリメントをはじめとする健康食品の普及により、商品の種類が広がったことに伴い、企業間で価格競争が行われています。
比較対象とする価格について、適正な表示が行われていない場合には、有利誤認表示と見なされてしまう可能性があるため、ご注意ください。
重ねて、SNS(ソーシャルメディア)やインターネット等を活用した広告・宣伝も増加していますが、拡散力が大きいからこそ、景品表示法を遵守した適正な標ぼうを行うことが求められています。
サプリメントの広告・表示を行う際には、適正な表示と事実に基づく情報発信を徹底しましょう。
「〇〇サプリメントは、他社製品の2倍の内容量で効果抜群!」「美肌に効果のある〇〇を含むサプリメントは、◯社が最もお得」
3. 一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定する表示

景品表示法における3つ目の規制事項は、「 一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定する表示」です。
第5条3項
3 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
景品表示法において、事業者は優良誤認表示や有利誤認表示だけでなく、自らの供給する商品やサービスに関する取引を行う際には、一般消費者が誤解を受ける可能性がある場合にも規制が適用されます。
具体的な規制項目と概要は、次の通りです。
また、サプリメントの広告・表示を行う際には、特に「2. 商品の原産国に関する不当な表示」「5. おとり広告に関する表示」「7. ステルスマーケティング」について注意しましょう。
規制項目 | 内容 |
1. 「無果汁の清涼飲料等」についての表示 | 【原材料に果汁または果肉が使用されていない清涼飲料水等に原材料に果汁等が全く使用されていない旨を記載しない場合は不当表示とする】 ■ 清涼飲料水等の容器または包装に記載されている《果実の名称を用いた商品名》の表示 ■ 清涼飲料水の容器または包装に掲載されている《果実の絵・写真・図案》の表示 ■ 清涼飲料水の容器または包装に、果汁・果皮・果肉と同一または類似の《色・香り/味のへ着色/着香/味付け》がされている場合の表示 |
2. 商品の原産国に関する不当な表示★ | 【商品の原産国を判別することが困難な場合、不当表示となる】 ■ 国内で生産された商品で、その商品が生産されたことを一般消費者が判別することがこんなんであると認められるもの ・外国の【国名・地名・国旗・紋章・その他これらに類するもの】の表示 ・外国の【事業者/デザイナーの氏名・名称/商標】の表示 ・文字による表示の【全部/収容部分】が外国の文字で示されている表示 ■ 外国で生産された商品で、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することがこんなんであると認められるもの ・商品の【国名・地名・国旗・紋章・その他これらのものに類するもの】の表示 ・商品の原産国以外の【事業者/デザイナーの氏名・名称/商標】の表示 ・文字による表示の【全部/収容部分】が和文で示されている表示 |
3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示 | 【消費者信用の融資費用について、実質年率が明瞭に記載されていない場合を不当表示とする】 ■ アドオン方式による【利息・手数料・その他の融資費用の率】の表示 ■ 日歩・月利等年建て以外による【利息・手数料・その他の融資費用の率】の表示■ 融資費用の額の表示 ■ 返済事例による融資費用の表示 ■ 融資費用の一部についての年建てによる率の表示 |
4. 不動産のおとり広告に関する表示 | 【一般消費者を誘引する手段として行う以外の表示を不当表示とする】 ■ 実在しないため、取引できない不動産についての表示 ■ 実在するが取引の対象となり得ない不動産についての表示 ■ 実在するが取引する意思がない不動産についての表示 |
5. おとり広告に関する表示★ | 【一般消費者を誘引する手段として行う以外の表示を不当表示とする】 ■ 取引を行うための準備がなされていないなど、取引に応じることができない場合の商品またはサービスについての表示 ■ 商品またはサービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない場合 ■ 取引の成立を妨げる行為が行われるなど実際には取引する意思がない商品またはサービスについての表示 |
6. 有料老人ホームに関する不当な表示 | 【有料老人ホームの施設・設備・サービスについて、以下のような表示を不当表示とする】 ■ 入居後の居室の住み替えに関する条件等が明瞭に記載されていない ■ 介護ルームサービスを提供するのが有料老人ホームでないにも関わらずその点が明瞭に記載されていない ■ 夜間における最少の介護職員・看護師の数など、介護職員等の数が明瞭に記載されていない |
7. ステルスマーケティング★ | 【消費者に広告・宣伝である旨を明記せずに、商品やサービスを宣伝したり、口コミまたはレビューを発信する行為の禁止】 ◎規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主) ■ 広告には、企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれru ■ インターネット上の表示(SNS投稿・レビュー投稿など)だけでなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等の表示についても対象となる |
「7. ステルスマーケティング」は、2023年(令和5年)10月1日に施行された「消費者庁告示」により、新たに「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」(以下、景品表示法)上の不当表示に追加された項目です。
出典:
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
- ステルスマーケティング
景品表示法に違反した場合のリスク

冒頭、サプリメントを広告・表示する際に、景品表示法における不当表示を行った場合、罰則の対象になるとご紹介しました。
不当表示に違反した場合、次の処遇を受ける可能性があるため、ご注意ください。
- 措置命令
- 課徴金納付命令
- 適格消費者団体による差止請求
- 懲役刑
違反行為による処罰により、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性もあります。
従って、サプリメントを広告・表示する場合には、景品表示法について正しい知識を学ぶことはもちろん、一人ひとりが法律を遵守するよう努めることが重要です。
それでは各項目について、ご紹介いたします。
1. 措置命令:第7条
不当表示違反における1つ目の罰則は、「措置命令」です。
サプリメントをはじめとする商品や役務(サービス)に対し、不当表示に接触する可能性がある行為がみられた際には、この罰則の対象となります。
この項目では、すぐに措置命令になるわけではありません。
各段階が踏まれており、外部からの情報提供・職権探知などを行い、それをもとに、関連資料の収集や事業者への事情聴取などの調査を実施します。
この調査により、違反行為が認められた場合、弁明の機会が与えられた後、違反行為の差止め など、必要に応じた「措置命令」を行うのです。
また、措置命令の目的としては、①違反したことを一般消費者に周知徹底すること、②再発防止策を講ずること、③違反行為を将来繰り返さないこと が挙げられます。
行政処分の流れや具体的な内容については、次の表をご覧ください。
措置命令の流れ |
1. 【公正取引委員会・消費者庁・都道府県】による外部からの情報提供、職権探知 |
2. 関連資料の収集や該当事業者への事情聴取などの調査 |
3. 弁明の機会を付与し、証拠の提出を求める |
4. 不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除・再発防止策の実施・今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令 |
5. 課徴金納付命令 ※次の節でご紹介いたします。 |
サプリメント広告で注意したい、景品表示法に基づく措置命令(行政処分)における実際の対象事例
消費者庁のガイドライン「消費者の皆様へ (健康食品の表示について)」では、実際に行った措置命令の事例について記載しています。
今回は、体験談とともに表示された、合理的な根拠を有していなかったとされる「不当表示」の実例について、ご紹介いたします。
繰り返しとなりますが、景品表示法における合理的な根拠とは、「提出資料が客観的に実証された内容」「表示された効果・性能に加え、提出資料により、実証された内容が適切に対応していること」が条件です。
次の措置命令の対象となった標ぼうを参考に、景品表示法を遵守するよう努めましょう。
- 決して食事制限はしないでください。このバイオ菌が恐ろしいまでにあなた のムダを強力サポート
- 食べたカロリー ・ 溜まったカロリー なかったことに・・・
- もうリバウンドしない『理想の姿』になりたい!!
- 私たちはたった1粒飲んで 楽ヤセしました!!
- 寝ている間に勝手にダイエット!?
- 寝る前に飲むだけで努力なし!?
- えっ!?普段の食事のままで・・・!
- カロリーを気にしないって幸せ!
課徴金納付命令:第8条
不当表示違反における2つ目の罰則は、「課徴金納付命令」です。
先にご紹介した措置命令の最終段階であり、不当表示に該当する、優良誤認表示または有利誤認表示を行った場合に、次の金額を支払う必要があります。
ただし、次のようなケースでは、課徴金の減額や免除になる可能性があります。
課徴金の減額や免除になるケース | 課徴金の減額や免除の割合 |
A:課徴額が150万円未満の場合(売上額が5,000万円未満) | 課徴金の免除(課徴金納付命令の対象外) |
B:事業者が表示の根拠となる情報を確認 するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠つた者でない」と認められる場合 | 課徴金の免除(課徴金納付命令の対象外 |
B:違反行為を自主的に申告した場合 | 課徴金額の50%(2分の1)減額 |
適格消費者団体による差止請求:第30条
不当表示違反における3つ目の罰則は、「適格消費者団体による差止請求」です。
適格消費者団体とは、「不不特定多数の消費者の利益を擁護するために、差止請求権を適切に行使できる専門性などの要件を満たしたうえで、内閣総理大臣によって認定された消費者団体のこと」です。政府広報オンラインより
また、差止請求とは、「不当な勧誘」や「不当な契約条項」等の事業者の不当な行為をやめるように求めることを指します。
この制度は、消費者と事業者との間には、情報量・交渉力の格差があることを踏まえ設けられたものです。
具体的には、適格消費者団体が事業者に対し、「優良誤認表示」または「有利誤認表示」違反に該当する広告表示の停止を書面で求めることができるよう定められています。
万が一、事業者が応じない場合には、広告表示の停止を求める訴訟を起こすことも可能です。
サプリメント広告の際に気をつけるべき、差止請求の主な事例
消費者庁のガイドライン「消費者団体訴訟制度 適格消費者団体による差止請求事例集」では、実際に行った措置命令の事例について記載しています。
今回は、実際に差止請求となった事例について、ご紹介いたします。
次の差止請求の対象となった表示方法を参考に、景品表示法を遵守するよう努めましょう。
A. 定期購入ではなくお試し価格で1回の購入だと誤認するインターネット通信販売(健康食品・化粧品)における表示 | B. 医薬品等ではないにもかかわらず特定の保健目的、効果が期待できると消費者を誤認させる 健康食品の広告表示等 |
■ 一見すると、お試し価格で1回のみ購入できるように見えるが、実際には複数回の購入が義務付けられ、2回目以降は通常価格となる商品の通信販売サイト | ■ 「〇〇の代わりに」(肝臓を休ませることの代わりになるかのような表記)等、特定の健康目的が期待できるかのような表示を行っている健康食品 →こちらの健康食品は、上記のような効果をもたらす成分の具体的な含有量を明らかにせず、「ギュッと濃縮」 といった過度に濃縮したことを印象づける表示を行っていた |
■ 新聞折込チラシにおいて、医薬品ではない健康食品に対し「病気と闘う免疫力を整える」等の表示や「前立腺癌が改善」等の体験談により、薬効や効果があるかのように謳う表示がなされていた | |
■ 「あらゆる病気改善にも効果的です」「水素水の効果でアトピー性皮膚炎改善」 等、水素水に医薬品的な効果・効果があるかのように謳うアフィリエイト広告表示が行われていた |
懲役刑:第36条〜39条
不当表示違反における4つ目の罰則は、「懲役刑」です。
景品表示法違反における措置命令を受けても従わず、虚偽の報告をしたり、違法な広告表示を継続した場合には、次の罰則を受ける場合があります。
懲役刑に関しては、違反当事者だけでなく、事業者(法人)にも罰金が科される可能性があることをご存知でしょうか。
違反した事業者には、最大3億円の罰金が科されるリスクがあるのです。
刑事罰をはじめ、このような措置を防ぐためにも、正しく法律を理解するとともに、より安全かつ製作者の意図が正確に伝わる訴求表現を行うためにも、専門的な知識のある弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
サプリメントの広告表現に関するご相談はXP法律事務所へ

ここまで、「景品表示(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)」におけるサプリメントの広告表現と規制事項について解説をしてきました。
繰り返しとなりますが、本記事の要点は次の通りです。
- 「景品表示法」の対象は、事業主が一般消費者に対し、自己の供給する商品・役務(サービス)の品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般である。
- 景品表示法の違反行為は不当表示であり、具体的には、【優良誤認表示】【有利誤認表示】【一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定する表示】である。
- 景品表示法に違反した場合、措置命令をはじめ、課徴金納付命令、適格消費者団体による差止請求、懲役刑の対象となる。
景品表示法に違反した場合、上記の通り、罰則の対象になるだけでなく、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性もあるため、一人ひとりが正しい知識を学び、法律を遵守するよう努めることが重要です。
従って、サプリメントを広告・表示する場合には、景品表示法について正しい知識を学ぶことはもちろん、一人ひとりが法律を遵守するよう努めることが重要です。
XP法律事務所では、サプリメントをはじめとする美容と健康市場に携わる方へ向け、景品表示法のリーガルチェックや訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。
特に、景品表示法の訴求表現は、各項目ごとに細かな規定が設けられていることから、どれだけ確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
弁護士をはじめとする法律の専門家に依頼することで、不当表示などの不正確な情報の発信やトラブルを未然に防げるだけでなく、サービスを利用する消費者の安全性を守ることにも繋がります。
景品表示法をはじめとする法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。
サプリメントをはじめとする美容と健康市場に向けての広告に関する助言や審査、景品表示法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。
お問い合わせ先
【XP法律事務所】
- 代表弁護士:今井 健仁(第二東京弁護士会)
- 所在地:〒104-0061 中央区銀座1-15-4 銀座一丁目ビル13階
- TEL:03-6274-6709(銀座本店)
- FAX:03-6274-6710(銀座本店)
- ホームページ:https://xp-law.com/