薬機法(旧薬事法)
薬機法と景品表示法の不当行為・ステマ規制の関連を徹底解説!PRや広報活動の注意点など
昨今、SNSプラットフォーム上において、インフルエンサーが事業者の依頼により商品をPRする投稿を目にすることが増えてきました。本記事では、薬機法に関する概要をはじめ、ステルスマーケティングの概要や種類、景品表示法との関連性や注意点、不当表示と違反した場合の罰則など、薬機法を取り巻く広告規制について解説いたします。

arrow_drop_down 目次
SNSが発達する昨今、ステルスマーケティング(いわゆるステマ)という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
InstagramやYouTubeをはじめとするSNSプラットフォーム上において、インスタグラマーやユーチューバーなどと呼ばれる、影響力のある、いわゆるインフルエンサーが事業者の依頼により商品をPRする投稿を目にすることが増えてきました。
薬機法では、広告に対しても規制が設けられており、商品をPR・宣伝するにあたって、言葉の選び方や商品の効果・効能を示す表現一つの違いで、「薬機法(旧:薬事法)」などの法律違反であると見なされてしまうケースがあるのです。
薬機法に係る商品を広告する際、「医薬品ではないにも関わらず医薬品と同等の効果があるように偽って表示する」「効果・効能を誇大広告する」など、薬機法における広告規制違反も問題視されています。
特に、広告規制においては、広告に携わったすべての人がその対象となり、薬機法に接触した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用されてしまうため、注意が必要です。
本記事では、薬機法に関する前提知識をはじめ、ステルスマーケティングの概要や種類、ステルスマーケティングと景品表示法の関連性や注意点、景品表示法の不当表示と違反した場合の罰則、薬機法の違反行為の一つである薬機法に違反した場合の罰則と注意事項など、薬機法と景品表示法を取り巻く広告規制について解説させていただきます。
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薬機法に係る製品を広告するにあたっての助言や審査はもちろん、薬機法についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。
化粧品や医薬部外品などの広告活動を行う上で知っておきたい薬機法とは

化粧品や医薬部外品など薬機法に係る製品を広告する際には、「薬機法(旧:薬事法)」が関係してきます。
前提として「薬機法(やっきほう)」とは、現在の法令名である正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」を略した名称です。
次の引用の通り、「薬機法で対象とされる製品の安全性・品質・有効性を確保し、保健衛生の向上を図ること」を目的とした、医薬品等の製造や販売をはじめ、流通や表示、広告に関する規律を行う法律のことです。
第1条:目的
第一条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律より
薬機法の規制対象は、次に記載する5分野です。
これらの製品を総称し「医薬品等」と呼びます。
以前は「薬事法(やくじほう)」と制定されていましたが、薬機法に関して、2014年(平成26年)11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、現在の名称に変更されました。
薬機法について正しい知識を学び、一人ひとりが法律を遵守するよう努めることが重要です。
そもそもステルスマーケティング(ステマ)とは

薬機法とステルスマーケティングの関連性についてご紹介する前に、そもそもステルスマーケティングとは何かという点についてご紹介させていただきます。
まず、ステルスマーケティングですが、2023年(令和5年)10月1日に施行された「消費者庁告示」により、新たに「不当景品類及び不当表示防止法(通称:景品表示法)」で規制される不当表示の追加項目に指定されました。《2023年10月1日「消費者告示」より》
前提として、「ステルスマーケティング(通称ステマ)」とは、英語の 「Stealth」(内密・隠密・隠れる)の単語に由来した名称です。
テレビやインターネットで「ステマ」などという言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
具体的には、企業が第三者であるインフルエンサーなどに報酬を支払い、広告・宣伝を依頼したのにも関わらず、それを隠して行われる情報発信のことです。
ステルスマーケティングを行うことで、一般消費者に対し、実際の商品やサービスよりも優れているという印象を不当に抱かせる可能性があるため、このような行為は、禁止されています。
具体的な禁止行為は、次の例の通りです。
- インフルエンサーが事業主からの金銭を対価に、広告であることを表記せず、「(宣伝であることを隠し)毎日愛用しています」といったSNS投稿を行うこと
- 企業が身分を偽り一般消費者になりすまして「これを試したら痩せました」などと口コミやレビューを偽装すること
後ほど詳しくご紹介しますが、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」とは、商品や役務(サービス)の取引を行うにあたって、不当な景品類や表示による消費者の誘引を防止するための法律です。
規制の対象は、商品・サービスを供給する事業者(広告主)が一般消費者に対し、自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般となります。
また、一般消費者に知らせる広告や表示とは、新聞やテレビ、雑誌、パンフレット、チラシ、ラベル、ラジオ、店内ディスプレイ、訪問販売・電話などのセールストーク、インターネット上の表示(SNS投稿・口コミサイト・ECサイトのレビュー投稿など)まで、多岐に渡ります。
ステルスマーケティングなど景品表示法に違反した場合、「措置命令」や「課徴金納付命令」、「適格消費者団体による差止請求」が課せられ、これらの命令に従わない場合、「懲役刑」などの厳しい罰則が適用される可能性が高いです。
薬機法に係る製品にも適用されることから、景品表示法について、正しい知識を学ぶことが重要です。
ステルスマーケティング(ステマ)の種類

続いて、こちらの章では、「ステルスマーケティング(ステマ)」の種類についてご紹介します。
ステマの種類は大きく分けて、次に記載した通りです。
- なりすまし型
- 利益提供型
1. なりすまし型

商品を購入したり、サービスを受けようとする際に、第三者の意見を参考にするために、口コミやレビューを確認する方も多いのではないでしょうか。
任意で投稿したり、匿名であるケースが多いからこそ、純粋な第三者の意見か関係企業の口コミであるか判断がつかない傾向が高いのです。
上記の通り、消費者が広告であると判断できないことで、質の良くない商品やサービスを購入してしまう可能性があることから、禁止されています。
重ねて、消費者であることを装い、競合他社の悪評や悪い口コミをインターネットに投稿するといった行為も同様にテルスマーケティングの「なりすまし型」です。
2. 利益提供型

具体的には、商品やサービスを実際には使用していないにも関わらず、愛用しているかのように偽ったり、効果・効能を誇大表示し、非常に優れた商品であるように謳い、消費者の購入を誘引しようとする行為のことです。
特に、芸能人をはじめとする影響力のある人物が評価をしている商品・サービスであれば、テレビ番組や映画も出演しているため、信憑性があるのではないかと購入に至る方も多いのではないでしょうか。
上記の通り、消費者が広告であると判断できないことに加え、本来の効果・効能などと異なる商品やサービスを購入してしまう可能性があることから、禁止されています。
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)とステマ行為について

こちらの章では、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」におけるステルスマーケティング行為の規制についてご紹介します。
景品表示法の場合、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。
景品表示法における、「景品」の意味は次の通りです。
- 顧客を誘引するための⼿段
- 事業者が⾃⼰の供給する商品または役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む)に付随して相手方に提供する物品
- 金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するもの
加えて、上記3の内閣総理大臣が指定するものとは、次の項目を指します。
- 物品・⼟地・建物・その他の⼯作物
- ⾦銭・⾦券・預⾦証書・当せん⾦付証票及び公社債・株券・商品券その他の有価証券
- きょう応(映画・演劇・スポーツ・旅⾏・その他の催物等への招待または優待を含む)
- 便益・労務・その他の役務
※正常な商慣習(商取引の過程において形成された慣習)に照らして値引またはアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らし、その取引に係る商品または役務に付属すると認められる経済上の利益は含みません。
景品表示法における不当表示の規制

先に、ステルスマーケティング(ステマ)は不当景品類及び不当表示防止(景品表示法)上の「不当表示」に当たる行為であるとご紹介しました。
ステルスマーケティングを含め、景品表示法上では、次の項目について規制を設けています。
具体的な規制項目は次の通りです。
- 優良誤認表示
- 不実証広告規制
- 有利誤認表示
- 商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれがある表示出会って、内閣総理大臣が指定する表示
1. 優良誤認表示
対象者は、経済活動を行う一般企業をはじめ、学校法人や社団法人、医療法人などの事業者です。
第5条1項
第五条
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
具体的には、消費者に対し、自己(≒自社)が提供する商品やサービスの【品質・規格・その他の内容】について、次のように表示することを禁止しています。
- 実際の商品やサービスよりも著しく優良であると表示すること
- 事実に相違して、競合事業者よりも著しく優良であると表示すること
合理的な根拠のない効果・効能を表示することは、優良誤認表示規制の対象となるため、ご注意ください。
「予備校の合格実績を具体的に数値化するなどの具体的な比較をせずに、競合事業者に比べ、合格実績がNo.1であると表示すること」「コピー用紙の古紙配合率が40%にも関わらず、100%と記載し、実際の数値であるかのように表示すること」
1-2. 不実証広告規制
7条2項・8条3項
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(7条2項)課徴金納付命令との関係では不当表示と推定される(8条3項)。
商品やサービスの内容【効果・性能】について、先にご紹介した「優良誤認表示」の疑いがある場合、その事業者に表示内容の合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるという制度です。
その際、合理的な根拠に関して、次の判断基準を設けています。
- 提出資料が客観的に実証された内容
- 表示された効果・性能に加え、提出資料により、実証された内容が適切に対応していること
合理的な根拠のない効果・性能に関する提出資料を期限である15日以内に提出できない場合、優良誤認表示規制の対象となるため、ご注意ください。
「ダイエット食品に対し、合理的な証拠がないにも関わらず、食事制限や運動制限することなく渾身効果があるかのように表示すること」「小顔矯正に関して、合理的な証拠がないにも関わらず、施術を受けることで即効性や自属性があるかのように表示すること」
2. 有利誤認表示(5条2項)
5条2項
第五条
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
具体的には、商品やサービスの【価格や取引条件(数量・アフターサービス・保証期間・支払い条件)】について、次のように表示することを禁止しています。
- 商品やサービス取引条件について、実際よりも著しく有利であると消費者に誤認される表示
- 商品やサービス取引条件について、競合事業者に比べ、著しく有利であると消費者に誤認される表示
重ねて、商品やサービスの販売価格を記載する際に、自己(≒自社)の販売価格よりも高い他の価格を併記し、表示することを二重価格表示と呼びます。
特に、比較対象とする価格内容について、適正な表示が行われていない場合には、有利誤認表示と見なされてしまう可能性があるため、ご注意ください。
「商品の内容量について、競合事業者と同程度の内容量にも関わらず、他社製品の2倍の内容量であるかのように表示すること」「携帯電話の通信料金に関して、競合事業者のサービス・割引など自社に不利となる情報を除外し、料金比較することで、自社が最もお得であるかのように表示すること。」
3. 一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定する表示
景品表示法において、一般消費者に誤認されるおそれがある表示で、内閣総理大臣が指定する表示について、次の規制が設けられています。
- 無果汁の清涼飲料等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
- ★ステルスマーケティング
上記の通り、ステルスマーケティングは、先にご紹介しましたが、2023年(令和5年)10月1日に施行された「消費者庁告示」により、新たに「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」(以下、景品表示法)上の不当表示に追加されました。
5条3項
第五条
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
規制の項目 | 具体的な内容 |
1. 無果汁の清涼飲料等についての表示 | 【原材料に果汁または果肉が使用されていない清涼飲料水等に原材料に果汁等が全く使用されていない旨を記載しない場合は不当表示とする】 ■ 清涼飲料水等の容器または包装に記載されてい《果実の名称を用いた商品名》の表示 ■ 清涼飲料水の容器または包装に掲載されている《果実の絵・写真・図案》の表示 ■ 清涼飲料水の容器または包装に、果汁・果皮・果肉と同一または類似の《色・香り/味のへ着色/着香/味付け》がされている場合の表示 |
2. 商品の原産国に関する不当な表示 | 【商品の原産国を判別することが困難な場合、不当表示となる】 ■ 国内で生産された商品で、その商品が生産されたことを一般消費者が判別することがこんなんであると認められるもの ・外国の【国名・地名・国旗・紋章・その他これらに類するもの】の表示 ・外国の【事業者/デザイナーの氏名・名称/商標】の表示・文字による表示の【全部/収容部分】が外国の文字で示されている表示 ■ 外国で生産された商品で、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することがこんなんであると認められるもの ・商品の【国名・地名・国旗・紋章・その他これらのものに類するもの】の表示 ・商品の原産国以外の【事業者/デザイナーの氏名・名称/商標】の表示 ・文字による表示の【全部/収容部分】が和文で示されている表示 |
3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示 | 【消費者信用の融資費用について、実質年率が明瞭に記載されていない場合を不当表示とする】 ■ アドオン方式による【利息・手数料・その他の融資費用の率】の表示 ■ 日歩・月利等年建て以外による【利息・手数料・その他の融資費用の率】の表示 ■ 融資費用の額の表示 ■ 返済事例による融資費用の表示 ■ 融資費用の一部についての年建てによる率の表示 |
4. 不動産のおとり広告に関する表示 | 【一般消費者を誘引する手段として行う以外の表示を不当表示とする】 ■ 実在しないため、取引できない不動産についての表示 ■ 実在するが取引の対象となり得ない不動産についての表示 ■ 実在するが取引する意思がない不動産についての表示 |
5. おとり広告に関する表示 | 【一般消費者を誘引する手段として行う以外の表示を不当表示とする】 ■ 取引を行うための準備がなされていないなど、取引に応じることができない場合の商品またはサービスについての表示 ■ 商品またはサービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない場合 ■ 取引の成立を妨げる行為が行われるなど実際には取引する意思がない商品またはサービスについての表示 |
6. 有料老人ホームに関する不当な表示 | 【有料老人ホームの施設・設備・サービスについて、以下のような表示を不当表示とする】 ■ 入居後の居室の住み替えに関する条件等が明瞭に記載されていない表示 ■ 介護ルームサービスを提供するのが有料老人ホームでないにも関わらずその点が明瞭に記載されていない場合 ■ 夜間における最少の介護職員・看護師の数など、介護職員等の数が明瞭に記載されていない数の表示 |
ステルスマーケティング(ステマ)を含む景品表示法における不当表示違反に対する罰則

先にご紹介した通り、不当景品類及び不当表示防止(景品表示法)の不当表示の一項目として2023年10月1日に追加されたステルスマーケティング(ステマ)。
規制の対象は、商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、事業主が一般消費者に対し、自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般となります。
繰り返しとなりますが、一般消費者に知らせる広告や表示とは、次の通りです。
また、TikTokの動画やInstagramのストーリーなども規制の対象ですので、ご注意ください。
不当表示に違反した場合、次の処遇を受ける可能性があります。
- 措置命令
- 課徴金納付命令
- 適格消費者団体による差止請求
- 懲役刑
それでは各項目について、ご紹介いたします。
措置命令
違反の可能性がある行為がみられた際には、この罰則の対象となります。
措置命令までの流れは段階が踏まれており、まずは、「外部からの情報提供・職権探知」などを行い、それをもとに「関連資料の収集や事業者への事情聴取などの調査」を実施します。
この調査により、違反行為が認められた場合、弁明の機会が与えられ、違反行為の差止め など、必要に応じた「措置命令」を行うのです。
行政処分の流れや具体的な内容については、次の表をご覧ください。
措置命令の流れ |
1. 【公正取引委員会・消費者庁・都道府県】による外部からの情報提供、職権探知 |
2. 関連資料の収集や該当事業者への事情聴取などの調査 |
3. 弁明の機会を付与し、証拠の提出を求める |
4. 不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除・再発防止策の実施・今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令 |
5. 課徴金納付命令 ※次の節でご紹介いたします。 |
第7条:措置命令
第七条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一 当該違反行為をした事業者
二 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四 当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
2 内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。
課徴金納付命令
先にご紹介した措置命令の最終段階として、課徴金納付命令が下されるケースがあります。
課徴金の額は、次の通りです。
ただし、次のようなケースでは、課徴金の減額や免除になる可能性があります。
課徴金の減額や免除になるケース | 課徴金の減額や免除の割合 |
A:課徴額が150万円未満の場合(売上額が5,000万円未満) | 課徴金の免除(課徴金納付命令の対象外) |
B:違反行為を自主的に申告した場合 | 課徴金額の50%(2分の1)減額 |
第8条:課徴金納付命令
第八条 事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
適格消費者団体による差止請求
前提として、適格消費者団体とは、「不不特定多数の消費者の利益を擁護するために、差止請求権を適切に行使できる専門性などの要件を満たしたうえで、内閣総理大臣によって認定された消費者団体のこと」です。政府広報オンラインより
この制度は、適格消費者団体が事業者に対し、「優良誤認表示」または「有利誤認表示」違反に該当する広告表示の停止を書面で求めることができるよう定められています。
第30条:適格消費者団体の差止請求権等
第三十条 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体(以下この条及び第四十一条において単に「適格消費者団体」という。)は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると誤認される表示をすること。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示をすること。
2 消費者安全法(平成二十一年法律第五十号)第十一条の七第一項に規定する消費生活協力団体及び消費生活協力員は、事業者が不特定かつ多数の一般消費者に対して前項各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがある旨の情報を得たときは、適格消費者団体が同項の規定による請求をする権利を適切に行使するために必要な限度において、当該適格消費者団体に対し、当該情報を提供することができる。
3 前項の規定により情報の提供を受けた適格消費者団体は、当該情報を第一項の規定による請求をする権利の適切な行使の用に供する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
懲役刑
景品表示法違反における措置命令を受けても従わず、虚偽の報告をしたり、違法な広告表示を継続した場合には、次の罰則を受ける場合があります。
懲役刑に関しては、違反当事者だけでなく、事業者(法人)にも罰金が科される可能性があることをご存知でしょうか。
違反事業者には、最大3億円の罰金が科されるリスクがあります。
刑事罰をはじめ、このような措置を防ぐためにも、正しく法律を理解するとともに、より安全かつ製作者の意図が正確に伝わる訴求表現を行うにあたって、専門的な知識のある弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
第36条・37条:罰則
第三十六条 第七条第一項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第三十七条 第二十九条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する
第38条・39条:罰則
第三十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第三十六条第一項 三億円以下の罰金刑
二 前条 同条の罰金刑
2 法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その団体に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第三十六条第一項 三億円以下の罰金刑
二 前条 同条の罰金刑
3 前項の場合においては、代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の訴訟行為に関する刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定を準用する。
第三十九条 第三十六条第一項の違反があつた場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該法人(当該法人で事業者団体に該当するものを除く。)の代表者に対しても、同項の罰金刑を科する。
薬機法の違反行為の一つである広告規制

繰り返しとなりますが、薬機法における違反行為は、次の3点です。
- 無許可営業・無登録営業
- 医薬品等の取り扱いに関する違反
- 広告規制違反
特に、薬機法の広告規制違反に関しては、違反広告に関係するすべての人が対象となります。
一方、「不当景品類及び不当表示防止(景品表示法)」の規制対象は、商品・サービスを供給する事業者(広告主)が一般消費者に対し、自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般となります。
従って、薬機法の規制対象に該当する分野【医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品】の商品・サービスを提供する事業者(広告主)が次のような行為をする場合、景品表示法に違反するだけでなく、薬機法にも接触する可能性があるのです。
薬機法や景品表示法違反と見なされた場合、消費者からの信頼を損ね、大きな経済的損失にも繋がるリスクも考えられます。
従って、景品表示法と薬機法ともに、法律を遵守するよう徹底することが重要です。
薬機法における違反行為の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
薬機法の広告規制に違反した場合の罰則とリスク

薬機法に違反した場合、次の処遇を受ける可能性があります。
- 行政処分
- 課徴金納付命令
- 刑事罰
各罰則の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
なお、先にご紹介した薬機法の広告規制違反に該当する行為は次の通りです。
薬機法違反として見なされる行為は、次の3つの項目です。
虚偽・誇大広告等の禁止(第66条):医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止
特定疾病用医薬品等の広告の制限(第67条):がん・肉腫・白血病などに使用されることが目的とされている医薬品・再生医療等製品のうち、医薬関係者以外の一般人を対象とした広告の禁止
承認前医薬品等の広告の禁止(第68条):医薬品等に該当しない製品を医薬品等と誤認させるような効能効果の表示・広告の禁止
薬機法を遵守するためにも、法律の専門家である弁護士にリーガルチェックや訴求表現をはじめとする、法的観点からのアドバイスを仰ぐ、というのも一つの選択肢として、検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ

今回、薬機法に関する前提知識をはじめ、ステルスマーケティングの概要や種類、ステルスマーケティングと景品表示法の関連性や注意点、景品表示法の不当表示と違反した場合の罰則、薬機法の違反行為の一つである薬機法に違反した場合の罰則と注意事項など、薬機法における医薬品を取り巻く広告規制について解説させていただきました。
繰り返しとなりますが、本記事のポイントは次の通りです。
- 「不当景品類及び不当表示防止(景品表示法)」の対象は、商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、事業主が一般消費者に対し、自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般である。
- ステルスマーケティングは、消費者に広告・宣伝である旨を明記せずに、商品やサービスを宣伝したり、口コミまたはレビューを発信する行為を指し、2023年(令和5年)10月1日に施行された「消費者庁告示」により、新たに「不当景品類及び不当表示防止法(通称:景品表示法)」で規制される不当表示の追加項目に指定された。
- ステルスマーケティングも該当行為の一つである「景品表示法」の規制項目に、【優良誤認表示・不実証広告規制・有利誤認表示・商品または役務の取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、内閣総理大臣が指定する表示】を設けており、違反した場合、【措置命令・課徴金納付命令・適格消費者団体による差止請求・懲役刑】の処遇を受ける可能性がある。
- 薬機法は、【無許可営業/無登録営業・医薬品等の取り扱いに関する違反・広告規制違反】を規制しており、違反した場合、【行政処分・課徴金納付命令・刑事罰】の処遇を受ける可能性がある。
- 薬機法の違反行為の一つである「広告規制違反」の対象は、個人・法人問わず、違反広告に関係するすべての人である。
- 薬機法の規制対象に該当する分野【医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品】の商品・サービスを提供する事業者(広告主)が次のような行為をする場合、景品表示法に違反するだけでなく、薬機法にも接触する可能性がある。
景品表示法や薬機法に違反した場合、行政処分・措置命令・課徴金納付命令・適格消費者団体による差止請求・刑事罰をはじめとする罰則対象になる可能性があるため、一人ひとりが正しい知識を学び、法律を遵守するよう努めることが重要です。
ただし、ステルスマーケティング行為を含む景品表示法や薬機法等のリーガルチェックや高度な技術を要する訴求表現を行うことは、専門性が高く、どれだけ確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
XP法律事務所では、薬機法に関するリーガルチェックや広告の訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。
薬機法に係る分野【医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品】の商品やサービスを提供する事業者(広告主)や販売を検討している方、薬機法に係る分野の商品・サービスの広告宣伝に携わる方など、薬機法と景品表示法に関する助言や審査、薬機法についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。
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