薬機法(旧薬事法)

広報担当者が押さえておくべきSNSにおける薬機法を徹底解説!情報発信時の注意点や対策など

InstagramやTikTok、TwitterをはじめとするSNS上で各企業が自社製品について広告を行う上で深く関係してくる法律の一つに、「薬機法」が挙げられます。違反した場合、厳しい罰則が適用されることから、薬機法を正しく理解し、遵守するためにも、SNSで情報発信する際の薬機法の規制事項について徹底解説いたします。

広報担当者が押さえておくべきSNSにおける薬機法を徹底解説!情報発信時の注意点や対策など

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InstagramやTikTok、TwitterをはじめとするSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用した集客は今やビジネスに欠かせないマーケティング手段です。

SNSを上手く利用することでコストをかけずに効率良く集客できる一方で、使い方を間違えると、知らず知らずのうちに法律に違反し、炎上に繋がってしまったというニュースを目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

各企業が自社製品の広告を行う上で深く関係してくる法律の一つに、医薬品等の製造や販売について規制する「薬機法」が挙げられます。

薬機法の対象は幅広く、SNSで多く見受けられる化粧品やサプリメントなども、薬機法の対象の一つです。

薬機法に違反した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用されることから、薬機法を正しく理解し、遵守するよう努めることが求められます。

特に、薬機法に該当する製品の「広告」を行う場合には、製造者や販売者だけでなく、広告代理店・制作会社・ライター・インフルエンサーなども、対象となるため、注意が必要です。

薬機法の訴求表現は専門知識を要し「知らず知らずのうちに法律に違反していた」といったトラブルを防ぐためにも、SNSで情報発信する際の薬機法の規制事項について、徹底解説いたします。

XP法律事務所では、薬機法におけるリーガルチェックや訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。

法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。

薬機法に係る分野の製品を製造販売している企業様や販売を検討しているクライアント様をはじめSNS広告に携わる方など、薬機法の広告規制に関する助言や審査、薬機法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。

そもそも「薬機法」とは

SNSにおける薬機法についてご紹介するにあたり、まずは薬機法の概要についてご紹介します。

前提として「薬機法(旧:薬事法)」とは、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことで、現行の法令名を略した名称です。

以前は「薬事法(やくじほう)」でしたが、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、現在の名称に変更されました。

「製品の安全性と品質を確保し、保健衛生の向上を図ること」を目的としており、薬機法の対象となる製品の製造や販売をはじめ、流通や表示、広告に関する規律を行う法律を指します。

第1条:目的

この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

薬機法の対象となる範囲

こちらの章では、SNSで広告を行う際に押さえておきたい、薬機法の対象となる範囲についてご紹介します。

薬機法の規制対象となるのは、次に挙げる分野です。

  1. 医薬品
  2. 医薬部外品
  3. 化粧品
  4. 医療機器
  5. 再生医療等製品

上記を総称し、「医薬品等」と呼びます。

また、これらに該当する製品、つまり薬機法の対象となる製品をSNSを利用し広告する場合、当該製品がどの分野に該当するのかという点に加え、後ほどご紹介する規制に違反しないよう努める必要があります。

各分野の詳細については、次の表をご覧ください。

薬機法の対象となる分野定義と目的
1. 医薬品【人や動物の病気の診断・治療・予防に使用されることを目的としたもの】

■ 厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書である「日本薬局方」に記載されているもの
2. 医薬部外品【医薬品に比べ、人体への作用が緩和なもの】

■ 吐き気やその他の不快感、口臭・体臭を防止するもの
■ あせも・ただれ等を防止するもの
■ 脱毛の防止・育毛または除毛などの美容を目的としたもの
■ ねずみ・はえ・蚊・のみなどの生物の防除を使用目的とした、機械器具等でないもの
■「薬用化粧品」
3. 化粧品【人体に対する作用が緩和で、人の身体を清潔にしたり、美化し、魅力を増すことを目的とする他、容貌を変えるために使用されるもの】

■ 「医薬品」としての使用目的を併せ持つものや「医薬部外品」を除外したもの
4. 医療機器【病気の診断・治療・予防に用いられる機器のこと】

■ 身体の構造や機能に影響を及ぼすための機械器具等
5. 再生医療等製品【医療または獣医療において、治療または予防することに用いられる、細胞に培養またはその他の加工を施したもののこと】

■ 身体の構造や機能の再建・修復、形成や疾病の治療・予防、遺伝子治療などを目的とするもののこと

さらに詳しい薬機法の概要については、こちらの記事をご覧ください。

薬機法における違反行為とは

冒頭、薬機法に違反した場合、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が適用される可能性があるとご紹介しました。

こちらの章では、「薬機法」における違反行為についてご紹介します。

SNSを利用した集客時に気を付けたい、薬機法における違反行為は次の通りです。

  1. 無許可営業・無登録営業
  2. 医薬品等の取り扱いに関する違反
  3. 広告規制違反★

上記の違反行為の中でも、本記事のメインテーマであるSNSでの情報発信をする際に関連してくる規制事項は、《3. 広告規制違反》となります。

広告規制の概要についてご紹介させていただく前に、簡単に《1. 無許可営業・無登録営業》《2. 医薬品等の取り扱いに関する違反》について解説いたします。

無許可営業・無登録営業

薬機法における違反行為の一つに、「無許可営業・無登録営業」が挙げられます。

薬機法では、医薬品等の製造や販売などの事業を行う場合、許可・登録をするよう義務付けているのです。

許可または登録を受けずに、次の表にまとめられた事業を行うことは、薬機法違反となり、厳しい処罰が課せられることになるため、ご注意ください。

区分対象分野具体的な内容
許可制薬局薬局の開設【薬機法第4条第1項】

医薬品・医薬部外品・化粧品
医薬品・医薬部外品・化粧品の製造販売業【第12条第1項】
医薬品・医薬部外品・化粧品の製造業【第13条第1項】
医療機器・体外診断用医薬品医療機器・体外診断用医薬品の製造販売業【第23条の2第1項】
医薬品医薬品の販売業【第24条第1項】

再生医療等製品
再生医療等製品の製造販売業【第23条の20第1項】
再生医療等製品の製造業【第23条の22第1項】
再生医療等製品の販売業【第40条の5第1項】
高度管理医療機器等高度管理医療機器等の販売業及び貸与業【第39条第1項】
医療機器医療機器の修理業【第40条の2第1項】
登録制医療機器・体外診断用医薬品医療機器・体外診断用医薬品の製造業【薬機法第23条の2の3第1項)

医薬品等の取り扱いに関する違反

薬機法では、医薬品の販売や表示をする際に、規制を設けています。

次の規制に違反した場合、薬機法違反の対象です。

  1. 処方箋医薬品の販売
  2. 直接の容器・被包への記載事項
  3. 記載禁止事項
  4. 違反医薬品の販売禁止

各項目の詳細は次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
処方箋の販売について■ 医師・歯科医師・獣医師から処方箋の交付を受けていない者に対する販売の禁止【第49条第1項】
医薬品の表示・記載について■ 直接の容器等の記載事項【第50条・第51条】
■ 容器等への符号(バーコード)等の記載【第52条1項】
■ 添付文書等の記載事項【第52条2項】
■ 記載事項の記載方法【第53条】
記載禁止事項について■ 記載禁止事項【第54条】
・虚偽または誤解を招くおそれのある事項
・承認を受けていない効能・効果・性能
・保健衛生上危険がある《用法・用量・使用期間》
違法医薬品の販売禁止について■ 薬機法に違反する医薬品の販売・授与等の禁止【第55条】
■ 薬機法に違反する医薬品の販売・製造等の禁止【第56条】

薬機法における広告規制

薬機法は医薬品等の製造・販売だけでなく、広告についても規制を設けています。

薬機法の対象分野の製品について広告を行う際には、次の項目に従う必要があります。

  • 虚偽・誇大広告等の禁止(第66条)
  • 特定疾病用医薬品等の広告の制限(第67条)
  • 承認前医薬品等の広告の禁止(第68条)

それでは、各項目について順にご紹介させていただきます。

虚偽・誇大広告等の禁止

薬機法の広告規制における1つ目の禁止事項は、明示的・暗示的に関わらず、医薬品等の虚偽・誇大広告等を行うことです。

繰り返しとなりますが、「医薬品等」とは、薬機法の対象となっている5分野を指し、これらの製品に対し、虚偽・誇大広告を行うことを禁止しています。

詳細については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
虚偽・誇大広告等の禁止【第66条】■ 薬品等の《名称・製造方法・効能・効果・性能》に関して、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布を禁止

【禁止】医薬品等の効果・効能・性能に対して、医師などが保証したと誤解されるおそれのある広告
【禁止】堕胎を暗示するものやわいせつな文書・図画を用いること

第66条:虚偽・誇大広告等の禁止 

  1. 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
  2. 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
  3. 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

特定疾病用医薬品等の広告の制限

薬機法の広告規制における2つ目の禁止事項は、特定疾病用医薬品等の広告を行うことです。

特定疾病用医薬品等を制限する理由として、がんや白血病などに対し使用されることを目的とした製品を扱う場合、安全性の担保が求められるだけでなく、高度な専門知識を要するといった理由が挙げられます。

詳細については、次の表をご覧ください。

項目具体的な内容
特定疾病用医薬品等の広告の制限【第67条】■ がん・肉腫・白血病などに使用されることが目的とされている医薬品・再生医療等製品のうち、医薬関係者以外の一般人を対象とした広告は禁止

◎ 医師をはじめとする医薬関係者を対象にした広告に限り、広告可能

第67条:特定疾病用医薬品等の広告の制限

  1. 生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
  2. 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

承認前医薬品等の広告の禁止

薬機法の広告規制において、違反行為と見なされる3つ目の項目は、承認前医薬品等の広告を行うことです。

健康食品や歯ブラシなど、医薬品に該当しない製品に対し、「がんを防止する」など、「薬でないもの」を「薬」のように宣伝した場合、「未承認の医薬品」であると判断されます。

その場合、薬機法以外の法律にも接触する可能性があるため、ご注意ください。

項目具体的な内容
承認前医薬品等の広告の禁止【第68条■ 医薬品等に該当しない製品を「医薬品等と誤認させるような効能効果の表示・広告」を行う広告は禁止
【禁止】薬でないものを「薬」のように宣伝すること

第68条:承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

  1. 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

薬機法とSNSの関連性

薬機法とSNSの関連性についてご紹介する際に、知っておきたい知識として、薬機法の広告規制の対象となる広告媒体が挙げられます。

前提として、薬機法における「広告」の定義は、次の通りです。

  1. 消費者を誘引する意図が明確
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかされている
  3. 一般人でも認知できるもの

また、広告と見なされるカテゴリーは、上記の通り、「一般消費者向けのすべての広告媒体」で、広告を掲載した媒体そのものを指します。

薬機法に係る分野の商品を販売することを目的で作成された広告に関しては、薬機法における広告であると考えると良いでしょう。

一般消費者向けのすべての広告媒体の具体例は、次の表をご覧ください。

一般消費者向けのすべての広告媒体
テレビ新聞雑誌ラジオ
Webサイトアフェリエイト広告★SNS(Instagram・TikTokなど)チラシ・ポスター・パンフレット
DM(ダイレクトメール)ブログ電子メール

上記の表の通り、SNSを利用した情報発信も薬機法における「広告」であることが分かります。

つまり、広告規制に従わなかった場合、薬機法違反と見なされ、次の章でご紹介する、課徴金納付命令や刑事罰などの処遇を受けることになります。

SNSという不特定多数に情報発信する際には、消費者の安全性を担保するといった意味でも、正確かつ偏りのない表現を使用するよう徹底しましょう。

薬機法における広告規制の対象者について

薬機法では、広告を掲載した媒体だけでなく、広告規制の対象者についても定められています。

薬機法における広告規制の対象者は「何人も」、つまり薬機法の対象分野に関する広告に関わる「すべての人」です。

法人・個人、フリーランスであるか否かは問わず、広告主だけでなく、SNSでの情報発信者や広告作成者まで、薬機法の広告規制の対象者となることにご留意ください。

広告規制の対象者については、次の表をご覧ください。

広告規制の対象者
広告主メディア運営事業者
広告代理店広告ツール事業者
広告関係企業レビューサイト運営事業者
新聞社雑誌社・出版社
テレビ放送局ラジオ放送局
ライターアフィリエイトサービスプロバイダー
アフェリエイターインフルエンサー
トラブルを未然に防ぐためにも、広告作成時に社内マニュアルを作成したり、フリーランスやインフルエンサーなど、委託先まで管理体制を徹底し、薬機法を遵守するよう徹底しましょう。

繰り返しとなりますが、薬機法に違反した場合、厳しい罰則が適用されることになります。

違反行為により、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性もあるのです。

薬機法に違反する前に、法律の専門家である弁護士に相談するなど、遵守状況など、具体的にアドバイスを仰ぎ、法律遵守に努めましょう。

薬機法に違反した場合どうなるのか?

薬機法に違反した場合、次の処遇を受ける可能性があります。

  1. 行政処分
  2. 課徴金納付命令
  3. 刑事罰

行政処分

薬機法に違反をした場合、「行政処分」の対象となります。

各段階にも順序があり、違法状態になっている内容を改めるよう命じ、報告書の提出を求められる「行政指導」から始まり、弁明の機会が与えられた後、さまざまな措置が施されるのです。

万が一、命令に従わない場合には、次の節でご紹介する「課徴金納付命令」が下されます。

項目具体的な内容
行政指導《行政処分までの流れ》

1. 行政処分
2. 業務改善命令
3. 措置命令
4. 業務停止命令
5. 許可・登録の取消
6. 課徴金納付命令★

課徴金納付命令

薬機法に違反した場合、行政処分の次の段階として「課徴金納付命令」を受ける可能性があります。

2020年8月1日の薬機法改正により、新たに導入された制度です。

こちらの制度の対象は、第66条の「虚偽・誇大広告等の禁止」に違反した場合となります。

近年問題となっている、SNSをはじめとする広告における、虚偽・誇大広告の違反行為の影響により、こちらの制度が導入されました。

課徴金の額と支払い期間は、次の通りです。

支払い金額支払い期間
虚偽・誇大広告を行っていた期間中に得られた売上金額の4.5%違反行為の開始日から数えて、最長3年間

ただし、次のようなケースでは、課徴金の減額や免除になる可能性があります。

課徴金の減額や免除になるケース課徴金の減額や免除の割合
対象となる売上金額が5,000万円未満の場合課徴金の免除(課徴金納付命令の対象外)
違反行為の発覚前に違反者が自主的に申告した場合課徴金額の50%減額

刑事罰

薬機法に違反した場合、「刑事罰」の対象となる可能性があります。

違反したという事実が存在することで、企業やブランドの評判に悪い影響を及ぼす可能性があるだけでなく、顧客の信頼性をも失うなど、事業に大きな支障が出る可能性があるのです。

その他の事実上の不利益として、薬機法違反により、損害賠償請求返金請求訴訟を受ける事例も方向されていることから、薬機法を遵守するよう徹底しましょう。

重ねて、従業員が違反した場合、違反者本人だけでなく、法人にも200万円以下罰金刑があることにもご留意ください。【第90条:両罰規定】

主な違反行為と刑事罰の内容は、次の図をご覧ください。

違反項目違反内容刑事罰の内容
第84条:無許可製造・販売次の対象者が医薬品等を無許可で製造・販売した場合

・医薬品の製造販売業(第12条第1項)
・医薬品の販売業(第24条第1項)
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両方
第85条:虚偽・誇大広告虚偽・誇大広告等の禁止(同第66条)に違反した場合2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方
第86条:特定疾病用の医薬品等に関する広告 がん・肉腫・白血病など、特定疾病の治療薬に関する、一般人への広告の禁止(第67条)1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または両方

薬機法を遵守するためにも、SNSでの情報発信時に気をつけること

こちらの章では、薬機法を遵守するためにも、SNSでの情報発信時に配慮すべきポイントについてご紹介します。

ご紹介した注意事項を参考にして、SNSで適切な広告を行えるよう徹底しましょう。

1. SNSで情報発信する際には担当者間のコミュニケーションを絶やさない

薬機法の対象となる製品をSNSで広告する際には、情報発信に携わった関係者同士でコミュニケーションを絶やさないよう連携しましょう。

先にご紹介した通り、薬機法における広告規制の対象者は、薬機法の対象分野に係る広告に関係した「すべての人」であり、法人・個人、フリーランスであるか否かは問われません。

また、薬機法に該当する製品の製造者・販売者などの広告主だけでなく、SNSでの情報発信者やSNS広告の作成者まで、規制の対象者と見なされるのです。

特に、SNSでの広告作成が社内で関係する場合は、連携が取りやすい傾向にありますが、インフルエンサーやアフェリエイターなどの社外の人間を起用した際には、認識のズレを抑えるためにも、当該製品の特性などの説明を徹底し、適切な広告となるよう対策する必要があります。

薬機法に違反する投稿を行った際には、依頼した企業自体が罪に問われてしまったり、当該広告の削除や追加料金を要する修正のやり取りを行うなど、問題が大きくなってしまう可能性が高いです。

社内でマニュアルを共有するだけでなく、委託者に対し、薬機法についての注意事項をまとめた依頼書を作成するなどして、未然にトラブルを防止しましょう。

2. SNSで名称を記載する際には正しい名称を用いる

厚生労働省が発出した「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」では、SNSをはじめとする広告する際に、薬機法の対象となる製品に関して、承認等を受けた名称または一般的な名称以外の名称を用いることを禁止しています。

前提知識として、医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」とは、虚偽・誇大広告を行うことを防ぎ、適正を図ることを目的とした基準です。

SNSで情報発信する際には、正しい名称を使用し、一般消費者が当該製品とそれ以外の製品とを誤認させないよう表現について注意を払いましょう。

その他、名称にまつわる注意事項については、次の表をご覧ください。

項目規制内容
名称の略称【広告の前後の関係等から総合的にみて、同一性を誤認させない場合、略称の使用を許可】

■ 「名称」について略称を使用する場合、必ず販売名を付記または付言し、明示しなければならない 
■ 名称の表現は明確に行い、名称と判断できないような、小さな字句等で表現することは認められない
名称の仮名・ふりがな【承認等を受けた医薬品等の名称を置き換えることは禁止】
(例:漢字で承認を受けたものを仮名・アルファベットに置き換えること。逆の行為も禁止である)

■ 医薬品等の同一性を誤認させない範囲で「漢字」 に「ふりがな」をふること・アルファベットを併記することは可能
愛称【医薬品・再生医療等製品の愛称の使用禁止】
【医薬部外品・化粧品・医療機器は、前後の関係等から総合的にみて、同一性を誤認させない場合、愛称の使用を許可

■ 販売名に使用することができないものを愛称として使用することは認められない
■ 愛称を使用する製品:愛称を広告に用いる場合、次の名称を付記または付言する・広告内に、承認等を受けた名称または一般名称・届出を行った一般的名称または届出を行った販売名

第4(基準) 

1 名称関係 

(1)承認又は認証を要する医薬品等の名称についての表現の範囲

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (昭和35年法律第 145号。以下「法」という。) 第14条又は第23条の2の5若しくは第23条の25の規定に基づく承認並びに法第 23 条の2の23の規定に基づく認証(以下「承認等」という。)を受けた名称又は一般的名称以外の名称を、別に定める場合を除き使用してはならない。 ただし、一般用医薬品及び医薬部外品においては、共通のブランド製品の共通部分のみを用いることは差し支えない。

(2)承認等を要しない医薬品等の名称についての表現の範囲

承認等を要しない医薬品等については、日本薬局方に定められた名称、法第14条の9若しくは第23条の2の12の規定に基づく届出を行った一 般的名称又は届け出た販売名以外の名称を、別に定める場合を除き使用してはならない。 なお、販売名はその医薬品等の製造方法、効能効果及び安全性について事実に反する認識を得させるおそれのあるものであってはならない。

3. SNSで他社製品の誹謗広告を行わない

厚生労働省による「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」では、薬機法の対象となる他社の製品を悪く表現し誹謗する他、他社と比較し、自社製品が優れていると表現することを禁止しています。

こちらは、薬機法に限らず、「名誉毀損罪(刑法230条)」や「侮辱罪(刑法231条)」などの罪に問われることとなり、民事事件として損害賠償請求をされたり、内容によっては、刑事事件として取り扱われる可能性もあるのです。

特に比較広告をする際には、自社製品の範囲内であっても、説明不足とならないよう、SNS投稿前に確認を徹底しましょう。

誹謗広告に接触する表現例比較広告に接触する表現例
1. 他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合

「〇〇の口紅は流行おくれのものばかり」「〇〇は流行に追いついていない」 
1. 漠然と比較する場合

「効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止」に抵触する可能性があるため、注意する
2. 他社の製品の内容について事実を表現した場合

「〇〇社は、未だ〇〇式製造方法だ」 
2. 製品同士の比較広告(明示的・暗示的を問わない)

ただし、自社製品の範囲であれば可能:対象とする製品の名称を明示する場合に限る

9 他社の製品の誹謗広告の制限

医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない。

4. SNSで医薬関係者等の推薦をアピールしない

薬機法に係る商品をSNSをはじめとする広告において発信時に、医薬関係者の推薦を記載することは、「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」で禁止されています。

事実であっても、「医者が推薦している」などの記載があることで、一般消費者の認識に強く影響を与える可能性がある点が理由です。

特に、SNSという拡散性が高いツールを使用する際には、情報の精度に慎重になる必要があります。

ただし、公衆衛生維持を目的に、市町村が「そ族昆虫駆除事業」を行う際に、特定の殺虫剤等の使用を住民に推奨する場合に限り、こちらの表現の使用が可能です。

項目接触内容
推せん等の行為が事実でない場合■ 第66条2項(誇大広告等)に接触する
特許に関する表現■ 事実であっても、本項に抵触する
■ 事実でない場合、虚偽広告に接触する
厚生労働省認可(許可・承認等)等の表現■ 本項に抵触する

10 医薬関係者等の推せん

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を 含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。 ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

5. SNSで懸賞や賞品等に医薬品等を授与すると謳う広告の禁止

厚生労働省が発出した「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」では、懸賞・賞品等を提供し、医薬品等を販売することを禁止しています。

上記のような販売手法は、昨今、SNSにおいて、プレゼントキャンペーンなど景品を提示し、集客するマーケティング手法により目にしたことのある方も少なくないのではないでしょうか。

こういったキャンペーンをはじめとする懸賞や賞品に医薬品等を掲げ、射こう心を煽る方法で、販売または広告を行うことは、医薬品等の大量消費や乱用助長を促す恐れがあることから、本項に接触することになります。

重ねて、医薬品等の容器や被包などに、医薬品等を商品とした引換券等を封入し、商品を広告・販売することも禁止行為です。

11 懸賞、賞品等による広告の制限 

(1)過剰な懸賞、賞品等射こう心を煽る方法による医薬品等又は企業の広告を行ってはならない。 

(2)懸賞、賞品として医薬品を授与する旨の広告を行ってはならない。 ただし、家庭薬を見本に提供する程度であればこの限りではない。 

(3)医薬品等の容器、被包等と引換えに医薬品を授与する旨の広告を行ってはならない。

6. SNSで多く見受けられる化粧品の広告を行う場合は、56の効果効能の範囲を守る

薬機法の対象分野の中で最もSNSで広告されているのは「化粧品」ではないでしょうか。

薬機法では、化粧品の効果・効能の範囲について、「厚生労働省医薬食品局長通知(平成23年7月21日薬食発0721第1号)」に記載された56の表現を守るよう定められています。

この規定が設けられている理由として、化粧品は、薬理作用として認められた効果・効能ではないことから、表現の範囲について、規制されているのです。

口紅やマスカラ、ファンデーションをはじめとする化粧品は、薬機法の対象で、広告規制が設けられていることから、効果・効能の範囲を逸脱しないように注意しなければなりません。

上記の表現以外に有効成分の作用を記載したい場合には、医薬部外品に数えられる「薬用化粧品」として承認等を要します。

化粧品の広告手段として選ばれる傾向の高いSNSで情報発信する際には、平成23年7月21日薬食発0721第1号 化粧品の効能の範囲の改正についてを担当者や委託先に共有し、誤った情報を発信しないよう、一人ひとりが心掛けましょう。

7. 弁護士などの法律の専門家にアドバイスを仰ぐ

薬機法を遵守するためには、薬機法とその他ガイドラインについての正しい知識が重要です。

自社でSNSでの広告を行う場合のマニュアルを作成した上で、常に最新の情報となるようアンテナを張る必要があります。

しかし、企業や個人単位で薬機法の対策を講じた場合でも、それぞれの案件について、個別の事情が設けられていたり、担当者間で確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

法律の専門家である弁護士に、自社はもちろん、提携企業やインフルエンサーなどの委託先が作成したSNSコンテンツのリーガルチェックを依頼することで、未然に薬機法違反による不利益を被らないよう改善できることもあります。

薬機法を強みとする弁護士であれば、薬機法を遵守した上で、自社製品の特性を生かした、より良い広告表現や修正案の提案、薬機法を遵守するための対策についてアドバイスを提供することも可能です。

SNSにおける広告表現に関するご相談はXP法律事務所へ

ここまで、薬機法の概要をはじめ、対象範囲やSNSと薬機法の関係性など、SNSで情報発信する際の薬機法の規制事項について解説をしてきました。

薬機法に違反した場合、行政処分・課徴金納付命令・刑事罰の対象となるだけでなく、企業の大きな経済的損失となってしまう上に、消費者からの社会的信用を失う可能性があります。

薬機法における広告規制の対象は、SNSといった、普段から気軽に利用できるツールを含む、一般消費者向けのすべての広告媒体です。

SNSを上手に活用することで効率良く集客できる一方で、薬機法違反となった場合、利用者が多いことで、すぐにトラブルが拡大しやすく、消費者の信用を失ってしまう可能性も高い傾向にあります。

さらに、薬機法の広告規制の対象者は、広告主や法人・個人か、フリーランスであるか否かを問わず、広告制作に関係する全ての人が“対象者の1人”です。

広告制作に携わった一人ひとりが薬機法の規制の当事者として意識し、薬機法を遵守するよう努めましょう。

重ねて、日々アップデートされる薬機法に係る通知や業界団体のガイドラインに対し、正しい知識情報を取り込み法律遵守を心掛けることが重要です。

XP法律事務所では、薬機法の対象分野に係る製品をSNSをはじめとする広告する方へ向け、広告に関するリーガルチェック訴求表現のアドバイスをはじめ、”新しい時代の法律事務所を創造する”という使命を掲げ、ビジネス全般に渡り、クライアント単位でトータルソリューションを提供しています。

特に薬機法の訴求表現は専門性が高いことから、どれだけ確認をしても、不安が残ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

弁護士をはじめとする法律の専門家に依頼することで、不正確な情報の発信やトラブルを未然に防げるだけでなく、サービスを利用する消費者の安全性を守ることにも繋がります。

法的な課題に対し、ビジネスのリーガルコンサルタントとして、相談者様のニーズを汲み取り、最適な解決へ向け、サポートいたします。

薬機法に係る分野をSNSで広告する場合、当該に関する助言や審査、薬機法をはじめとする法令についてご不明点がある場合には、XP法律事務所までお気軽にご相談ください。

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